ども、母の声が聞こえた岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日のつづき。

 

 

 *

 

 

「この口座の残高を全部下ろすってこと?」

 

「まぁ、そうだな。お母さんはもうおらんわけだし」

 

「いくらぐらい入ってるの?」

 

「正確にはわからんけどーー」

 

「うん」

 

「たぶん100万円くらいかな」

 

「!」

 

 

ひゃ、ひゃ、

ひゃ・く・ま・ん・え・ん???

 

そりゃまた、ずいぶんな額じゃないか

 

 

「……本当に100万?」

 

「あぁ、たぶん」

 

「1万や2万じゃなくて?」

 

「あぁ」

 

「なんでわかるの?」

 

「前に、Nさん(親族)に頼まれて、100万円を貸したことがあってな」

 

「知ってるよ、お母さんから聞いてた」

 

「で、そのお金を返してもらったときに、この口座を開いたはずなんだわ」

 

「……」

 

「確か、そのお金を全部入れるために開いたんだと思う」

 

「……」

 

 

 *

 

 

ポイントその1

 

昨日も書いたがーー

 

母・秀子さんは口座がたくさんあることをとても嫌がっていた人だ。

 

預金のために新設するとは考えにくい。

 

 

 *

 

ポイントその2

 

100歩譲ってーー

 

秀子さんが

何かしらの意図があって、ヘソクリ的な意味合いを持つそのお金を、わざわざ口座を開いて、こっそり蓄えていたとしよう。

 

それならば、必ず、僕に、この口座の存在を伝えているはずだ。

 

しかし、僕は聞いていない。

 

しっかり者の母が、そんなうっかりミスをするとは考えにくい。

 

 

 *

 

 

ポイントその3

 

そもそもーー

 

そんな大金が入っているカードを

 

“あの”秀子さんが

 

“あの”隆夫さんに

 

預けたり、渡したりするはずがない。

 

 

 *

 

 

ポイントその4

 

父・隆夫さんは、このカードの存在を、なぜ、今このタイミングで出してきたのか?

 

母が亡くなってからすでに2年半という時間が経過している。

 

その間、ずっと僕には黙ったまま持っていたということだ。

 

なぜか?

 

考えられる理由はたった一つ。

 

“金に困ったときにこのカードを頼りにしようと思っていた”

 

それ以外には考えられない。

 

つまりーー

 

“現在、隆夫さんのパチンコの負けが込んでいる可能性が高い”ということだ。

 

今は新型ウィルスの影響で毎日というわけじゃないが、それでも週に1~2日はパチンコ屋へ出かけている。

 

やらかしてしまってるのだろうか、このクソおやじ?

 

 

 *

 

 

隆夫さんが言った。

 

「……下ろせるかいな?」

 

 

次の瞬間ーー

 

天からの声が聞こえた

 

ーーような気がした。

 

「たっちゃん!」

 

それは懐かしい母の声だった。

 

その、僕の名前を呼ぶ一言で、秀子さんの言いたいことをすべて理解した。

 

お母さん

了解しました

僕を信じてお任せください

 

……それにしても

 

いくらお盆だからって、こんな用事で帰って来たくないよね?

(これは17日の出来事です)

 

 

「すぐに下せるかどうかはわかんないけど。とにかく調べてみるよ」

 

「あぁ、頼むわ」

 

 

時間を稼ぎ

残高を調べ

次の一手をどうするか?

 

考えるんだ、自分……

 

 

 

 

 

つづく