ども、秘書岡田達也です。
昨日のつづき。
これは僕の叔母が我が家にやってきた話。
*
日本海から戻ったあと、叔母・多鶴子さん(80)が言った。
「達也、明日帰ろうと思うけど、飛行機のチケットは取れるかいな?」
「え? 一泊しかしないの? せっかくだからもっとゆっくりしていけばいいのに」
なんだかんだ言いながら、僕もこの叔母とはウマが合うし、父・隆夫さんもこの妹だけとは話ができる。
それに……
実は、多鶴子さんには
母・秀子さんが闘病中、何度もお願いして東京から足を運んでもらい本当にお世話になった。
移動も大変だったと思うが、多鶴子さんはイヤな顔一つせず「お姉さん(秀子さん)のためなら」と言って引き受けてくれ、身の回りの世話や、我が家の家事を引き受けてくれた。
なんというか、まぁ、何かできるわけでもないが、せめてゆっくりしていってもらいたい。
「そうしたいけど私もまだ働いてるし。今回は無理言って休みをもらってきたけなぁ。予定より早く帰れるならその方がありがたい」
「そっか、なら仕方ないね。わかった」
こちらは鳥取と東京を往復している身だ。
チケットの予約だけは慣れている。
僕はPCを開き、ANAのページで最安値を確認し予約を入れた。
「えっ? もう取れたんか?」
「うん」
「仕事が早いなぁ。さすが私の弟子だわ」
「……弟子入りしてねーし」
「さすが私の秘書だわ」
「……だったらギャラ払ってくれよ」
「この仕事の早さは私にそっくりだわ。ひょっとして、あんた、私の子?」
「……ちげーよ。俺を生んだ記憶はあるのか?」
「どうだったかいなぁ?」
「いやいやいや、考えるなよ! ないでしょ! おばちゃんが腹を痛めて生んだのは「しんちゃん」と「りか」の2人ね」
「そうか」
「でね、料金だけど、株主優待が一番安かったからそれにしておいた。そうするとチケットが14,940円と、株主優待券は、今、コロナで値下がりしてるから安いんだよ、たしか金券屋でーー」
「達也! まって、まって、まって!」
「なに? 何か問題ある?」
「株主優待券?」
「そう」
「私、ANAの株主になるの?」
「……はっ?」
「全日空の株主に私がなるの?」
「……いや、ちょっと違う」
「あ、そう。残念」
「で、株主優待券がたしか3,500円だから、合わせて18,440円ね」
「ええっ!!!」
「どうした?」
「私、来るとき28,000円だったで!」
「うん、そんなもんだと思うよ。普通に購入したらその値段になるかな」
「1万円も安く買えるんか???」
「HPで検索すれば、そのときの最安値が出るから、それで買うのが基本だよ」
「達也ーー」
「ん?」
「あんたーー」
「なに?」
「さては、裏の世界に通じてるね?」
「……は?」
「だっておかしいじゃない! 1万円も安いなんて!」
「……」
「なに悪いことしとるだ?」
「……」
「芝居の世界は怪しいな」
「ちょっと黙ってて。あんまりガタガタ言うとチケット、キャンセルするよ」
「(お口にチャックのポーズ)」
「あのね、もしも今後、鳥取に来るときがあるなら、まずはしんちゃんかりかに調べてもらって、株主優待が一番安いならチケットショップで優待券を買う、早割の方が安いならそっちで予約する。覚えた?」
「はい、わかりました。ちょっと待って、メモするわ」
こうして多鶴子さんは80歳にして
初めて株主優待券を知った。
つづく
追伸
昨日の日記に対して、久松信美先輩からコメントがありました。
「俺ならば3キロは投げる。
さっき2キロ投げて来た。
ほんと。」
よ~く考えてみれば……
多鶴子さんと久松さんの発言はとても似ている気がします。
「ウィンクしたら3人倒れた」なんて、まったく同じこと言ってるし。
2キロの遠投ができるのなら、ただの化け物です。