ども、うまくやりたい岡田達也です
部屋を整理していたら
『初日FAX』なるものが出てきた。
これは
キャラメルボックス劇団員の誰かが外部出演するたびに
他のメンバーが「初日おめでとう!」という寄せ書きをして
それを取りまとめた新人くんたちが
初日直前に合わせて劇場さんにFAXで送り
出演者に手渡してもらうーー
という
元々は大森美紀子先輩が始めた
キャラメルボックスの恒例行事で
その歴史は長く長く続いている。
おかげで
他の劇団の俳優さんたちも知っている人が多く
実際に僕も
「うわ! ホントにあるんですね!」とか
「噂には聞いてましたけど、初めて見ました!」とか
多くの人にうらやましがられた。
そんな
我が劇団にとっては由緒あるFAXだ。
僕は劇団の中でも客演が多い方なので
そのFAXの枚数はかなりある。
* *
僕の好きな噺家さんに
立川志の輔師匠がいる。
志の輔さんは
言わずと知れた名人・立川談志師匠のお弟子さんだ。
残念ながら
僕の祖母・愛子さんが談志師匠を苦手にしていたため
(理由は聞いたことないけど)
その影響で
僕も子供の頃から
なんとなく談志師匠を遠ざけていたのだけど
大人になるにつれ
その魅力的なエピソードを聞くたびに
「もっと早く談志師匠に興味をもっていたら、ひょっとすると生で噺を聴く機会を持てたかもしれないのになぁ」
と、少し残念に思っている。
* *
志の輔師匠の話で印象に残っているのがーー
談志師匠は
大事な場面では
(というか、ここぞというとき)
「うまくやれよ」と言っていそうだ。
おそらく志の輔師匠も
その他のお弟子さんも言われた言葉だと思う。
それから
ここが大切なんだけどーー
談志師匠は
冗談めかしてではなく
とても真剣に、まっすぐに
「うまくやれよ」と言ってたらしい。
「うまくやれよ」
という言葉だけ拾うと
「じょうずに立ち回れよ」的な匂いを感じさせる言葉だし
ともすると「狡賢い」印象があったりする。
(少なくとも僕は、ですよ)
だけど
談志師匠は
「うまくやれよ」
という言葉をチョイスして声をかけていたんだそうだ。
この言葉に含まれた意味には
大変、興味をそそられる。
* *
『初日FAX』を見返してみた。
もちろんそこには
作・演出の成井さんの言葉も書かれている。
僕にとって成井さんは芝居のお師匠さんでもある。
その師匠の
僕に対する言葉が
いつ頃からか同じものになっていた。
「バレないようにうまくやれ」
……
……
何を?
何をバレないようにやればいいのだろう?
芝居の実力?
それとも人間性?
腹黒さ?
……
……
う~ん
う~ん
僕は、しばらくFAXを持ったまま固まってしまった。
この言葉に含まれた意味には
大変、興味をそそられる。
* *
談志師匠と
成井さんは
同じ意味で使っていたのか?
それとも
まったくの別物なのか?
答えは二人にしかわからない。
*
どうやら
言葉には果てしない可能性があるようだ。
だからこそ
使う側も、受け取る側も
適当に扱ってはいけないのだろう。
今日も取り扱い注意でいこうと思う。
では、また。