ども、自力の岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日のつづき。

 

 

 *

 

 

突然襲い掛かってきたお医者さんの攻撃。

 

「尿酸値が8,4です。いつ痛風が発病してもおかしくないですよ」

(基準値は2,1~7,0)

 

そして、半笑いで言われた

「舞台になんか立てませんよ」

というトドメの一突き。

 

……ダメだ

 

きっとこの先生は僕をいたぶることしか考えてない

 

そんな脅し文句に負けてる場合じゃない

 

 

僕はキャラメルボックスの稽古場近くにある

信頼できる先生がいる、かかりつけの病院に

健康診査報告書を握りしめて行った。

 

 

 *

 

 

A先生は報告書を見ながら口を開いた。

 

「……岡田さん、ビールお好きですか?」

 

「大好きです」

 

「私も大好きです」

 

「……はぁ」

(今、その告白は必要なんだろうか?)

 

「特に、夏場の、キンキンに冷えたやつはたまりません」

 

「……えぇ」

(よほど好きなんだろうなぁ。いい表情だ)

 

「おそらくそれが原因だと思われます」

 

「やっぱりそうですか」

 

「それと、岡田さんは舞台で動かれますよね? 実は運動も体を酸性にするので、尿酸が溜まりやすいんです。スポーツ選手に痛風が多いのはこのためです」

 

「なるほど……」

 

ここで

A先生は

声を潜め

驚きの発言を繰り出してきた。

 

「実は、僕も、尿酸値が基準値を超えてるんです(笑)」

 

「!」

 

そ、それは

 

ま、まさしく

 

「医者の不養生」じゃないですか!!!

 

だ、だ、

大丈夫なんですか???

 

「心配いりません。僕は尿酸値を下げる薬を飲んでますから」

 

あぁ、そうですか

それなら一安心ですね

 

……って、なんか違和感がありますね

 

でも、まぁ、そういう薬があるってことがわかっただけでもありがたい。

 

僕にも処方してもらおう。

 

舞台に立てないほど痛いなんて怖すぎるし。

 

 

「じゃ、僕にもその薬をーー」

 

「ダメです」

 

「ええええっっっ???」

 

ちょいちょいちょい

まってまってまって

 

自分は薬飲んでおいて

どうして僕はダメなんですか?

 

おかしくないですか?????

 

「岡田さんは、まだ自力で引き返せます!」

 

「引き返す?」

 

「食生活の見直しによって数値が変わるはずです!」

 

いやいやいや

先生先生先生

 

理屈はそうでしょうけど

だったら、なぜ、先生はそうしなかったんですか???

 

てか、僕はそんなに偏食じゃないですし

「食生活の見直し」って

要はビールをやめなさいってことですよね???

 

「いきなり禁酒しなくても大丈夫です」

 

「……」

 

「醸造酒ではなく、蒸留酒に切り替えればいいんですから」

 

「……」

 

「ホッピーとか、酎ハイとか、ハイボールとか」

 

「……」

 

「どうしてもビールが飲みたくなったらですねーー」

 

「えぇ」

 

「なるだけプリン体の低いものを選んでください」

 

「それは?」

 

「発泡酒とか第3のビールは低めです。普通のビールの中でも含有量は違ってきますよ。『エビス』とか『プレモル』は高目です。もっと高いのは地ビールですね」

 

「……」

(さすがに詳しいな)

 

「がんばってください。半年後、もう一度検査しましょう」

 

 

こうして

僕は

人生で

初めての禁ビールを余儀なくされた。

 

 

 

 

 

つづく