ども、悪者の岡田達也です。

 

 

 

 

 

昨日のつづき

 

 

 *

 

 

僕は鳥取市にあるハローワークに向かった。

 

 

僕を担当してくれたのは

おそらく僕よりも10歳ほど年上の

Uさんという

優しそうなおじ様だった。

 

人の好さが顔に現れている

 

この方なら頼りになりそうだ

 

 

僕は自分に言い聞かせた。

 

ここは正直に話をしよう

 

いつものように話を茶化してしまうと

見つかるものも見つからなくなってしまうぞ……

 

 

 * *

 

 

「ほう! 俳優さんをやっとられるですか?」

 

Uさんは鳥取弁丸出しで驚きの声を上げた。

 

「ええ。主に舞台をやってます」

 

「どんな舞台をやっとられるですか?」

 

きた

 

きたよ

 

この質問が一番キツイ

 

簡潔に答えられる、的確な言葉が浮かばないのだ

 

「……いろいろです」

 

「いろいろですか?」

 

Uさんが少しガッカリしたように見えたので、僕は慌てて取り繕った。

 

最近やった舞台のことを話せばいいだけじゃないか

 

えーっと

えーっと

 

一番最近やったのが『花火の陰』だからーー

 

「例えば、ファンタジーな現代劇とかーー」

 

「ほう! ファンタジー!」

 

食い付くな……

 

「はい。死んだ人間と再会できる、というような内容なんですが」

 

「それはすごい」

 

確かに……

現実にあったらすごいよな

 

自分だったら腰抜かすわ

 

「他には?」

 

「その前にやってたお芝居はーー」

 

「ええ」

 

『刀剣乱舞』って言ってわるんだろうか?

 

「何と言いますか、刀が、擬人化してーー」

 

「……刀が、擬人化?」

 

そりゃそうだよな

 

?がいっぱいになるよな

 

だから苦手なんだよ、この質問

 

「日本刀が、特殊な力によって、人の姿になるんです」

 

「ほう、それは面白そうだ」

 

……そろそろ仕事の話にならないだろうか?

 

「で、未来から、歴史改変しようとする悪者がやってくるのですが、それをその刀たちの活躍で食い止めるんです」

 

「水戸黄門、みたいな?」

 

……どうしてそうなる?

 

「とにかく、刀が日本の歴史を守るんです」

 

「岡田さんは悪者の方ですか?」

 

……なんですか、それ?

 

見た目ですか?

 

僕に正義の味方は務まらないと思ってます?

 

ま、確かに、今回演じた坂本龍馬は

立場で言えば悪者側ではあるけれど

それでも「悪者」と言い切ってしまうには抵抗があるぞ

 

「まぁ、悪役と言いますか、何と言いますかーー」

 

やっぱりだ

 

予想通りの歯切れの悪さだ

 

「そうですか」

 

……納得するんだ

 

「で、どういうお仕事をお探しですか?」

 

 

やっと本題に入れたよ

 

 

 

 

 

つづく