ども、2度ほど転落した経験を持つ岡田達也です。

 

 

 

 

 

我が家の1階にはちょいと広めのリビングがあり

その隣には6畳の和室がある。

 

父・隆夫さんはその和室で寝ている。

 

昔は2階で就寝していたのだが

歳を取り、階段の上り下りがきつくなってきたらしく

還暦過ぎた辺りから2階に上るのをやめてしまった。

 

当たり前だ。

 

若い頃に肺結核を患い

(この病気での入院が母・秀子さんとの出会いらしい)

 

オマケに

新神戸オリエンタル劇場に芝居を観に来てくれた帰りの電車の中で心筋梗塞を発病し

周囲を大騒ぎに巻き込んだ経験を持つ人だ。

 

普通の人より呼吸器官が弱い。

 

圧倒的に弱い。

 

だから少しくらい鍛えれば良いと思うのだが

「歩くと死ぬ」と言って聞かず

田舎特有の“徒歩3分のコンビニも車で行く”という始末で

 

そのうち脚が消えてなくなるのでは?

と思っている。

 

 

 *

 

 

さて。

 

その和室にベッドが置いてある。

 

父はそのベッドで寝起きしている。

 

パイプベッドだ。

 

言葉が悪いが

どう見ても

安物の

1万円するはずのない代物だ。

 

「お母さん(母・秀子さん)の友達の平井さんという人がススメてくれたベッドでなぁ。「岡田さん! このベッドはええで! イタリア製で、高級品で、夢見心地が違うで! 絶対に買いんさい!」って言われてお母さんが買ってしまっただが」

 

「……買ってしまった? 詐欺みたいな言い方するね」

 

「だって、3万なんぼしたで」

 

「……(詐欺だな)」

 

「するわけないが」

 

「……(そりゃそうだ)」

 

「夢見心地はちっとも良くないしーー」

 

「……(だろうな)」

 

「イタリアっぽくないし」

 

「……(確実にニトリにあるぞ)」

 

「何回かベッドから落ちたし」

 

「……(それは自己責任だろ?)」

 

「ちっとも良くないで」

 

まぁ、そう言いたくなるのもわかる

 

じゃあ、なんで秀子さんはこのベッドを買ったんだろう?

 

「「お父さんが寝起きしやすいように」って言ってくれてな」

 

あっ……

 

そっか……

 

布団よりベッドの方が、寝起きするとき楽ちんなのは当たり前か

 

歳とったらなおさらだよな

 

平場から立ち上がる動作は大変だけど

脚を下すだけならなんとかなるし

 

「夢見心地は良くないけどなぁ」

 

「……(こだわるな)」

 

「仕方ないけなぁ、このベッドで寝るわい」

 

 

 *

 

うんうん

それがいいかもね

 

もう少し良いベッドを買ってやろうかと思ったけどやめておこう

 

……ただし、落ちるなよ

 

 

 

 

 

では、また。