ども、入団するならホークスが良かった岡田達也です。

 

 

 

 

 

ひょっとすると……

 

僕は疲れているのかもしれない。

 

「いや、疲れてなんかいない!」と

全力で否定したいところだが

 

今朝見た夢があまりにも理解不能で

 

これはもう

芝居に精力を傾けすぎて心身ともに疲れているか

 

もしくは

脳内が「唐橋菌」に侵食されているか

 

そのどちらかだと思う。

 

 

時間の無駄になるので、まったくもって読む必要はないと思うけど

「どうしても」という人だけ進んでいただきたい。

 

 * *

 

楽屋にいた。

 

僕の楽屋は

神農直隆(武市半平太役)

一色洋平(岡田以蔵役)

唐橋充(吉田東洋役)

そして僕

この4人部屋だ。

 

お昼の回が終わり、4人で弁当を食べていた。

 

夜の回に向けて早く食事を済ませ

1分でもいいから、体を休めたいーー

 

そんな思いからか、みんな静かに食べているときだった。

 

スーツ姿のおじさんが部屋に入ってきた。

 

ん?

誰だろう?

 

見たことない人だぞ……

 

他の3人もポカンとしている。

どうやら誰も知らないらしい。

 

そのおじさんは名乗ることもなく、いきなり口を開いた。

 

「残念なお知らせだがーー」

 

「?」

 

「トレードが決まった。今から発表する」

 

「???」

 

ト、ト、

トレードですか?

 

ちょい、ちょい、ちょい

演劇界にトレードってあんの?

 

「候補に挙がったのは、岡田達也、唐橋充、この2人でーー」

 

おい、おい、おい!!!

まて、まて、まて!!!

 

「最終的には岡田達也に出て行ってもらうことになった」

 

「ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!」

 

「これはフロントの判断だ。覆ることはない」

 

僕は混乱した。

 

なんだ?

演劇界でトレードって?

 

しかも俺が?

一体どこの誰と交換なんだ?

 

僕は抵抗した。

 

「いや、ちょっと待ってください! おかしくないですか? 僕がいなくなったら夜の回はどうするんですか?」

 

「心配ない。君とトレードでやってくる選手が、坂本龍馬を演じる予定だ」

 

「ほら!ほら!ほら! 今、「選手」って言いましたよね?」

 

「なんだね?」

 

「 「役者」じゃなくて「選手」が来るっておかしいでしょ? どんな有能な選手か知りませんけど、セリフや段取りを今から覚えるんですか? そんなの無理でしょ!」

 

「そこは君が心配しなくてもいいんだよ! とにかく君は今すぐ荷物をまとめてーー」

 

「なんですか!」

 

「北海道に向かってくれ」

 

「!!!!!」

 

「君の移籍先は『北海道日本ハムファイターズ』だ」

 

「!!!!!」

 

「君の今後の活躍を願ってやまない」

 

 

そのときの衝撃を文章にすることができない。

 

だって、あまりにも驚いてしまい

本当に言葉が出てこなかったのだ。

 

俺、プロ野球に行くの?

ホークスじゃなくてファイターズに行くの?

誰とトレードされるの?

その人は演劇できるの?

夜の回、間に合うの?

いや、そんなことはどうでもいいんだよ

51歳で野球始めるの、自分?

 

そもそもトレードが成立してるのおかしくないか?

 

とにかく

いろんなことが頭をよぎって、何も言葉にできなかった。

 

混乱していた。

状況が理解できなかった。

 

僕は顔を上げて唐橋さんを見た。

 

もしかすると彼に救いを求めていたのかもしれない。

 

唐橋さんは僕を見て言った。

「達也さん、今までお世話になりました。共演できて良かったです。北海道でも頑張ってくださいね」

 

「ちょ、ちょっと待って! この話を止めてくれよ!」

 

「イヤですよ!」

 

「なんで?」

 

「だって、達也さんが行かないなら、僕がトレードされるってことでしょう?」

 

「……」

 

「いってらっしゃい」

 

「……」

 

 * *

 

僕は芝居で疲れているか

 

唐橋さんに疲れているか

 

そのどちらかだと思う。

 

 

 

 

 

では、また。