ども、ネコと寝起きしていた岡田達也です。

 

 

 

 

 

大学に入学した僕は

家賃18,000円の『太子荘』というボロアパートに住むことになった。

(現在は無いそうです)

 

で。

そこには生まれたての子猫が3匹と、お母さんネコがいた。

 

僕と

やんちき(鳥取出身、僕と同じ高校)

なばえちゃん(広島出身)

ともあつくん(福岡出身)

ら、仲が良かったみんなで世話することにした。

 

 

問題は名前だ。

 

「名前会議」が開かれることになった。

 

場所は

壁の色がどぎつい水色に塗られている

やんちきの部屋だった。

 

 

誰かが言った。

 

「たま、はどうだ?」

 

誰も賛同しなかった。

 

「みけ、はどうだ?」

 

白地に茶色であって三毛猫じゃないし。

 

「ネコ、はどうだ?」

 

……それ、名前か?

 

みんな黙りこくった。

 

 *

 

やんちきの部屋には麻雀マンガが置いてあった。

 

みんな麻雀が打てる連中だった。

いや、打てるどころではなく中毒患者ばかりだった。

 

僕はその雑誌を手にしてパラパラとめくった。

 

『哭(な)きの竜』という

僕の大好きなマンガが目に入った。

 

僕は、この、

いつでも煙草をくゆらせて

「……あんた、背中がすすけてるぜ」

という決め台詞を言いながら

ポン、チー、カンを必要以上に多発し

バッタバッタとヤクザを倒していく主人公が大好きだった。

 

「……竜、はどうかな?」

 

一瞬の沈黙の後

 

「いいね」

 

「竜はかっこいいんじゃない?」

 

「それはありだ」

 

賛同を得られた。

 

一匹は決まった。

 

 *

 

と、

なばえちゃんが言った。

 

「だったら、もう一匹は「次郎」はどうかな?」

 

同じ雑誌に掲載されている

『裏プロ雀鬼』という実に恐ろしげなタイトルのマンガの主人公

裏プロ雀士「三日月次郎」のことだと思われる。

 

「いいね」

 

「次郎はかっこいいんじゃない?」

 

「それはありだ」

 

二匹目が決まった。

 

 *

 

その雑誌には、もう、魅力的な主人公がいなかった。

 

だが。

ネコはもう一匹いる。

 

「どうしよう?」

 

「何にしよう?」

 

「じゃあ、実在のプロで麻雀の強い人とか?」

 

「桜井章一?とか」

 

「それ、伝説の人だよ? 子猫が伝説になっちゃうよ」

 

「じゃあ、ムツゴロウさん?」

 

「ネコにムツゴロウはどうなんだ?」

 

「……う~ん」

 

みんな頭を抱えた。

 

僕は

その名前の決まらない1匹を抱えた。

 

他の2匹はすばしっこく

なかなか抱っこできないのだが

その1匹だけは

どこか動きがスローモーで

なんとなくすきだらけで

いつでも抱っこできた。

 

僕はつぶやいた。

 

「……こいつはドジだなぁ」

 

それを聞いた、ともあつくんが言った。

 

「どじ、はどうだ?」

 

沈黙の後

 

「いいね」

 

「どじは面白いんじゃない?」

 

「それはありだ」

 

名前を付けることにすっかり飽きていた僕たちは即決した。

 

 *

 

こうして

『太子荘』に住んでいる子猫たちの名前は

 

「次郎」

「竜」

「どじ」

 

に決まった。

 

 

僕たちの思いがいっぱい詰まっているーー

かどうかは定かではないけど

 

僕たちは

自分たちで名付けたその3匹を

アパートを出るまで可愛がった。

 

 * * *

 

明日は大学4年生のときに飼っていたワンちゃんの話を。

 

 

 

 

 

つづく