ども、ハチが大きい岡田達也です。

 

 

 

 

 

『鬘合わせ(かつらあわせ)』

という仕事がある。

 

 

『鬘合わせ』とは

読んで字のごとく

「その人の頭に合うかつらを探す」

という作業。

 

 

演劇人にとって非常に大切なこと。

 

ここを怠ると、あとでひどい目に合う。

 

いや、ひどい目で済めばまだいい。

生涯の傷になる可能性だってある。

 

 

サイスが合ってない場合

どういう悲劇が起こるかというと……

 

 

 *

 

 

ゆるい場合。

 

本番中にすっ飛んでいってしまう

もしくは、ずれてしまう

 

僕も何度か遭遇した。

 

 

例えば。

何があったのか知らないが

自分のかつらを抱えて舞台上を走ってる

後輩女優の岡内美喜○を見たことがある。

(プライバシーの保護のため、一部伏せ字にしてみました)

 

あのときの彼女の形相は

リーチ・マイケル選手にも負けない迫力があった。

 

 

また。

 

 

舞台上でかつらを飛ばしてしまったのに

気絶している場面だったため被り直すことができず

先輩俳優の畑中智○から

「いいからかつらを被って!」と言われて

かつらを被りながら舞台袖にはけて行く左東広○を見たことがある。

(プライバシーの保護のため、一部伏せ字にしてみました)

 

あのときの彼のフットワークは

松島幸太朗選手よりも華麗だったように思う。

 

 

また。

 

 

舞台上で

僕を中心に車座になって真剣な話し合いをしている場面で

畑中智○が興奮した芝居をしていて

周囲のみんなに「あの人を斬るしかない!」と熱量高く訴えるのだが

そのときに首を振りながらしゃべるものだから

彼のかつらが、どんどん上にずれていってしまい

異様におでこが広くなっていき

たった数分後にはフランケンシュタインみたいになっていたことがある。

(プライバシーの保護のため、一部伏せ字にしてみました)

 

迷惑なのは一緒にいるこっちだ。

 

時代劇だぞ

幕末だぞ 

 

なんで西洋の化け物が「藩政」について熱く語っているのだ?

おまえの居場所は『怪物くん』にしかないだろ?

 

と、心の中では思ったが

舞台上でツッコむわけにもいかず

隣りに座っている大内厚○の膝を意味もなく叩いて

自分自身の笑いをこらえた苦い経験がある。

 

 *

 

逆にかつらがキツいのも辛い。

 

とにかく、こめかみが締め付けられるのだ。

 

これが、とても痛い……

気分は孫悟空である。

 

本番中、芝居と戦うのではなく、頭痛と戦う結果になる。

 

 

腹筋善之○さんなどは

あまりの痛みに耐えられず

かつらと自分の肌のすき間に指を入れて無理やりかつらの形を変えて広げてしまった。

(プライバシーの保護のため、一部伏せ字にしてみました)

 

それで本人は問題ないのだが

芝居が終わってかつらを返却に行ったのは僕で

そのときにどれだけかつら屋さんに怒られたことか。

「使った本人を連れてこいっ!」と怒鳴られたのも今では笑い話だ。

 

 *

 

このように

鬘合わせというのは

丁寧にやっておかないと大変な惨事を巻き起こす。

 

  *

 

 

2007年

キャラメルボックスで上演した『まつさをな』というお芝居のときのこと。

 

僕はかつら合わせのため

いつもお世話になっている『太陽かつら』さんに出かけていた。

 

 

 

 

 

つづく