ども、仕事が多い岡田達也です。

 

 

 

 

 

『世襲戦隊カゾクマンⅢ』を終えて鳥取に帰ってきた。

 

 *

 

夕食後。

 

「ちょっと話がある」

 

父・隆夫さんが僕に言った。

 

「……」

 

背中に寒いものが走った。

 

父が真顔で「話がある」なんて、絶対にろくなことがない。

間違いない。

 

僕は経験上、知っている。

 

人生で最もひどかった「話がある」は

「すまんが300万円貸してくれ」

と電話で言われたときだった。

 

あれを越える話でなければ良いのだが……

 

 

 *

 

 

「まずは墓掃除だ」

 

「あぁ」

 

「お盆だけなぁ、墓掃除をせないけんが」

 

もう理解できた。

墓掃除は必要だ。

だが、自分は行きたくないのだ。

暑いし、面倒なのだろう。

言外に頼むと言っている。

 

「……わかったよ、行ってくる」

 

「えぇかえ?」

 

良いも悪いもない。

それしか選択肢はないのだ。

 

「じゃ、お父さん、行ってよ」

という言葉を発したら何と言うだろう?

 

きっと

「俺が墓掃除をしたら暑さで死ぬ」

と言うに違いない。

僕は言うのをガマンした。

 

 

「墓掃除はやっとくけど、墓参りも行かないの?」

 

「いや、それはおまえが掃除してくれた後、涼しい時間帯に行ってくる」

 

「……あんたは殿様か?」

と言うのもガマンした。

 

 

 *

 

 

「それからなぁーー」

 

「なに?」

 

「盆提灯を出さないけんだが」

 

「……」

 

「あそこに箱は出しといただけどな」

 

もう理解できた。

母・秀子さんの遺影の前に飾る盆提灯を組み立てろ、と言っている。

だが、自分は組み立てる気はないのだ。

ハナから面倒なのだろう。

言外に頼むと言っている。

 

しかし、逆に、箱だけ出してあるというのがイラつく。

「さぁ、やれよ」と言われている気がする。

 

「……わかったよ、組み立てておくよ」

 

「えぇかえ?」

 

良いも悪いもない。

それしか選択肢はないのだ。

 

「じゃ、お父さん、組み立ててよ。きっとお母さん、喜ぶよ」

という言葉を僕は飲み込んだ。

 

もしも隆夫さんが盆提灯を組み立てようものなら

秀子さんはその驚きで生き返るだろう。

“死者が生き返る”

そんな超常現象があってはいけない。

 

 

 *

 

 

「それからなぁーー」

 

「なに?」

 

「今週はうちが清掃頭番になっとるだが」

 

「……」

 

我が町内会では、持ち回りで清掃頭番が決められており

ゴミ収集場を見に行って

ちゃんと決められたゴミが出されているのか?

分別できているか?

などを確認する仕事がある。

 

もう理解できた。

ゴミ捨て場は我が家から200mほど離れている。

たかが200mだが、隆夫さんにとっては永遠の距離だ。

ひょっとすると“天国への階段”くらいに思っているのかもしれない。

言外に頼むと言っている。

 

「……わかったよ、行ってくるよ」

 

「えぇかえ?」

 

良いも悪いもない。

それしか選択肢はないのだ。

 

とーー

 

「まぁ、あれだったら俺が行くけなぁ」

 

……

……

 

おいおいおい

もしもしもし

 

「あれ」ってなんですか?

「あれ」ってなんですか?

 

「ノー」と言う権利が僕にはあるんですか?

「行ってくれ」と言えば行ってくれるんですか?

 

そう言いながら

隆夫さんは脇腹をボリボリかき

横たわった。

 

「……」

 

 *

 

そうだった。

実家に帰るということはこういうことだ。

 

僕は自分を慰めるために思った。

 

いいじゃないか

「300万円貸してくれ」

と言われたわけじゃないんだから

な、自分。

 

 

……どなたか僕を慰めてください

 

 

 *

 

昨日、鳥取市内で行われた『シャンシャンまつり』

何十年ぶりかで見に行きました。

 

 

 

 

 

では、また。