ども、初体験の岡田達也です。

 

 

 

 

 

僕も長いこと芝居をやってきた。

 

28年だ。

 

たかが28年

されど28年

 

無いほうが良いに越したことはないけど

それだけやってりゃ、いろんなアクシデントに見舞われてきた。

 

立ち回りで相手役の鎖骨が肋骨に当たり骨折

相手役の槍が額に刺さって12針縫う

ダンスの最中に左足のヒラメ筋が断裂して肉離れ

……といったケガや

 

本番中に停電が起こる

ドライアイスの量を間違えてドライアイスマシンが爆発する

クライマックスシーンで大音量で流れていた曲が突然止まる

目の前で踊っていた後輩が、ターンをした次の瞬間消えていて、どこに行ったのかと思えばセットの水槽の中に溺れていた

……なんてテクニカルな問題や

 

本番中に地震が起こる

……といった自然災害まで

 

ありとあらゆるアクシデントを経験してきた。

 

心のどこかで「これ以上はもうないだろう」と思っていたのも事実だ。

 

 

だけど。

昨日の舞台は「こんなことがあるのか?」という初めてのトラブルだった。

 

 

 * 

 

 

台風8号が九州に接近していた。

僕たちが向かう種子島は直撃の可能性があった。

 

人(キャスト・スタッフ)は

鹿児島から高速船でなんとか種子島に渡ることができた。

 

が。

大道具(舞台セット)やら小道具やらが積まれたトラックは海を渡ることができなかった。

 

フェリーが運行を休止したのだ。

 

『プロジェクトX』風に言うなら

「そのとき、フェリーは運行休止を決めた」

というナレーションが入ってるところだろう。

 

 

舞台セットが無いーー

 

こんなアクシデント

そうそう経験できない

 

単純に考えれば、お手上げと言っていい。

頭を抱える状態と言っていい。

公演中止になってもおかしくない状況だ。

 

だけど。

我々は舞台人であって

「お客さんが1人でもいるのならどんなことがあっても上演にこぎ着ける」

という教えを、先人たちから受け継いでいる。

 

 

プロデューサーの号令のもと

スタッフさんたちは種子島を走り回った。

 

似た置き道具を探し

似た小道具を探し

友人、知人、関係者に声をかけ

ありとあらゆる代用品を準備してくれた。

 

セットはない

だけど音楽はある

照明も数は少ないけど色はある

それに

これが奇跡的だったのだけど

お芝居の中で重要な要素となる映像を打つことができた

 

衣装は……

実は台風接近のニュースを聞いて

万が一のために役者たちが各自手持ちで運んできていた。

 

最低限の材料は揃った。

 

舞台上の条件が変わるため

改めて場当たり(テクニカルリハーサル)を5時間かけてやり

上演の準備を整えた。

 

前説を加えて

事情説明とセットの補足も行った。

 

あとは

種子島のお客さんの想像力をお借りして

いつも通りの芝居を全力でやるだけだった。

 

 *

 

お客さんの反応は上々だった。

 

チビっ子からお年寄り

さらには養護施設の少年・青年たち

島中からたくさんの人が観に来てくれて

会場は温かい拍手と笑い声でいっぱいになった。

 

 *

 

こんなことある?

 

こんな奇跡起こるの?

 

 *

 

終演後

役者もスタッフさんたちも制作さんも

お客さんに負けないくらいの笑顔でいっぱいになった。

 

やればできるもんだ……

 

もちろんアクシデントは無いほうがいいに決まってるし

それを回避するために万全の準備をして望む。

 

だけど、自然相手にはどうしようもないことが起きる。

 

それでも

簡単に諦めないで

全員で乗り越えたこの舞台のことは僕は一生忘れない。

 

 

種子島のみなさん

本当に本当にありがとうございました!

 

 *

 

やり終えた男優たち

 

 

やりきった女優たち

 

 

「各自必要なものを手持ちしてください」と言われ

小倉から乗り込んだ九州新幹線にて。

弁当を手にした芋洗坂係長と

薔薇を口に加えている筆者

 

……他にもっと大切なものはなかったのか?

 

 

 

 

 

では、また。