ども、押したくなる岡田達也です。

 

 

 

 

 

前から「ひょっとしらそうかもしれない」と薄々気付いていたが……

 

どうやら僕はボタンが好きらしい。

(押す方のです)

 

 *

 

例えば

バスに乗ってる時。

自分が降りたい停留所の名前がコールされたら

何が何でも僕があのチャイムを鳴らしたくなる。

 

僕がボタンを押したい

最初に押したい

たとえ相手が誰であろうと負けたくない

……と思ってしまう。

 

たまに考え事をしていたり、スマホをいじっていて

停車案内のアナウンスをスルーしてしまい

誰かにボタンを押されたときなどはとても落ち込む。

ものすごくガッカリする。

集中してなかった自分を呪う。

 

 *

 

例えば

エレベーターのボタンも、可能な限り自分で押したい。

 

みんなの行き先を操りたい

僕の指で

 

と言いながら

大人になってガマンすることも覚えたし

何よりずっとボタンの前に張り付いていると

「オマエは子供か?」

とツッコまれそうなので

最近では3回に1回は他の人に委ねることにしている。

 

 *

 

先日、スパに出かけた。

 

そこに「ジェットバス」がある。

ボタンを押すと強烈なジェットが吹き出して、2分ほどしたら自動的に止まる。

 

噴射口が横並びのものと、縦並びの2台があって

僕は横並びのヤツが大好きで

「あ~」とか「くぅ~」と言いながら

腰の痛みをやわらげるためにジェットバスに張り付いていた。

 

隣の縦並びには小学生がいた。

 

この子はずいぶん長いことここにいる。

どうやらジェットバスが楽しいらしく

「や~!」「とぉ~!」などの奇声を上げながら

絶え間なく出てくるジェットに向かって、キックやチョップを繰り出している。

 

大人げない僕は

「おいおい、ちみちみ。いくら泡と戦っても一生勝てないよ。いいかげん、私のような“痛みに苦しむ大人”に場所をゆずりなさいよ」

と心の中でつぶやいていた。

 

……と

 

泡が、止まった。

 

ボタンを押せば再び泡が出る。

 

が。

ボタンは2つのジェットバスのちょうど真ん中にある。

それを“どちらか1人が押せば”いい。

 

僕と、子供の、目が合った。

 

こちらは50歳超え、向こうは10歳前後

その差、約40年

 

だが

ここで年齢や人生経験は関係ない

 

人間の本能だろう

 

お互いに悟ったのだ

 

「こいつ、ボタンを押したがってる!」と

 

 

僕は右手をボタンに向かって伸ばした。

 

するとーー

ヤツはすかさず、両手で、ボタンを覆って隠した。

隠しやがった。

 

小学生がニヤッとした。

 

僕もニヤッとした。

 

そのまま、しばらく、2人とも動かなかった。

 

ここが公衆の面前でなければ僕も勝負を挑むところだが、さすがにここでは無理だ。

 

僕は言った。

「……ボタンを押してくれる?」

 

彼は勝ち誇った顔で

「いいよ」

と言いながら、ボタンを押した。

 

 

僕は下唇を噛みながらジェットバスに身を委ねた。

 

完全に僕の負けだった。

 

 *

 

くぅ~

ボタン押してぇ~

 

 

 

 

 

では、また。