ども、助手の岡田達也です。
僕は劇団では「音響部」として働いている。
仕込みのときは
腰痛持ち泣かせな重たくてどでかいスピーカーを運んで組み立て
ジャングルのような劇場内にケーブルを這わせ
アンプとスピーカーをつないで音が出るように準備したり
音響卓の前に座って音楽を再生させたり
とにかく
音響オペレーターさんの助手として雑用をこなすのが主な仕事。
ある意味、「歯科助手」みたいなかんじ、と思ってもらえればいい。
* *
時代は進化している。
今、すべての音源はPCの中にある。
劇中に再生される音は
コンピューターから音響卓・アンプ・スピーカーを通して客席に届けられる。
しかし。
昔は「CD」だった。
「MD」が開発されるとCDをダビングして音を出していた。
「DAT」を使っていた時期もある。
MDやDATなんて今の若者は知らないだろう。
だが。
歴史はいくらでも逆上れる。
さらに前は「オープンリールデッキ」という物から音を出していた。
おそらく、キャラメルボックスのメンバーでも大内厚雄や前田綾がギリギリ体験してて、それ以降のメンバーはCDの音でしか舞台に立ってない。
まぁ、見てもらったとおり、ちょいと取扱い注意な機械だ。
画面をタッチすれば音が再生される……
なんて簡単なものじゃない。
少なくとも、音響の勉強をした人間でなければ触ることができない。
しかも、劇場に置いてあるものなんて、10万やそこらで買える代物ではない。
素人が下手にいじって壊したら大変なことになる。
* *
24年前の冬
『レインディアエクスプレス』という芝居のときのこと
新神戸オリエンタル劇場での仕込み中
僕は2階にある音響室にいた。
僕の目の前には音響卓
右横にはオープンリールデッキ
そう
僕は音響オペレーター・Hさんの助手として「音出し」を任されていた。
Hさんが客席の真ん中で音を聞きながら
音響室の中にいる僕に向かってチューニングの指示を出す。
僕は言われたとおりにイコライザーをいじって、音質を調整する
……という役割りだった。
つづく