ども、深く傷付けてしまった岡田達也です。
主な登場人物
僕 中年のアル中。子供のころは可愛かったという噂もある。
上田吉恵 僕の伯母。岡田家の長女。現在88歳。
岡田隆夫 僕の父。岡田家の長男。現在83歳。若い頃、好き放題に生きていた。
岡田愛子 僕の祖母。吉恵さんと隆夫さんの母。僕は子供のころからかわいがってもらっていた。35年前に没。
*
おばあちゃん
大好きだったおばあちゃん
悪気はなかったんです
ごめんなさい
*
吉恵おばちゃんは、鳥取県中部に位置する倉吉市というところに住んでいる。
鳥取市からは車でちょうど1時間。
吉恵おばちゃんはずいぶん前に旦那さんを亡くし、子供もいなかったので、甥や姪をとても可愛がってくれていた。
もちろん、僕もそうだ。
それは大人になっても変わらない。
芝居を始めて、地元の新聞に載ったときの記事は、今でも額縁に入れて飾ってくれている。
その記事は僕が教えたわけでもないのに、よくぞ見つけてくれたものだ。
昨日、久しぶりに顔を見せに行った。
吉恵おばちゃんは88歳になろうというのに、実にシャキシャキしており、まったく年齢を感じさせない。
昨日も素敵な和食の店に連れて行ってくれて、立派な会席料理をごちそうになった。
僕は赤ワインを飲んでいた。
それを見たおばちゃんは
「私もお酒をもらおうかしら。たっちゃん、日本酒をお願いして。ぬる燗よ、ぬる燗。熱燗はダメよ」
と念を押して僕に注文させた。
昼間のお酒はことさら回る。
二人ともほろ酔いになってきた。
……と
吉恵おばちゃんが僕に尋ねてきた。
「隆夫さんは元気でやってるか?」
隆夫さんはパチンコに出かけていて忙しく、今日は来ていない。
「うん、元気にしてるよ」
僕は今日来ていない理由を省いて、聞かれたことだけに答えた。
吉恵おばちゃんは遠い目をして、昔話を始めた。
「なんであんなになっちゃったかなぁ」
「……」
「私がもっと厳しく育てていればこうはならなかったかもなぁ」
長女だった吉恵さんは、早くに亡くなった父に代わり、家業の呉服屋を受け継ぎ、弟と妹たちの面倒を見ていた。
実質、岡田家の大国柱だったらしい。
「……」
「男は1人だったからなぁ、母も隆夫さんには甘かったけなぁ」
岡田家は6人兄妹で、男は隆夫さん1人しかいない。
「私なぁ、よう忘れんだが」
「何?」
「おばあちゃん(愛子さん)が、あんたの家に行った帰りに駅まで迎えに行ってなーー」
「うん」
「そこのベンチでおばあちゃんが言ったわいな」
「?」
「「達也に、「おばあちゃん、どうしてお父さんをもっと良い人に生んでくれんかったの?」と言われて」」
「……」
「「私は何も言えんかった」、そう言いながら、おばあちゃんは涙をポロポロこぼしてな」
「……」
「私もそれを見て涙が出てきてな」
*
おばあちゃん
大好きだったおばあちゃん
悪気はなかったんです
ごめんなさい
おばあちゃんを傷付ける気持ちはなかったんです
本当です
僕がガマンを覚えていればこんなことにはならなかったのにね
子供は残酷な生き物なんです
* * *
昨日の出来事を小説風に書いてみました。
では、また。