ども、満足してもらえなかった岡田達也です。

 

 

 

父・隆夫さん(83)はDVDを借りてきて見るのが趣味だ。

 

母・秀子さんが生きていたときは、どういうわけだか2人揃って韓流ドラマにずっぽりとはまり、

定期的に新たな作品を借りて2人で見ていた。

日本のドラマにはまったく興味がない2人が、なぜ韓流ドラマは借りてきてまで見たがるのか?

僕は不思議でしょうがなかったが、韓流好きな人とはそういうものらしい。

日本のドラマにはない、何かがあるという。

 

 

だが。

今、隆夫さんのブームは韓流ではなくバリバリのアクション物だ。

 

秀子さんがいなくなったからなのか?

それとも見飽きてしまったのか?

それとも元々韓流なんかに興味はなかったけど秀子さんに付き合っていたのか?ーー

真実はわからないが、今は韓流はおよびでないらしい。

 

その代り

バリバリのガンアクションやカーチェイス

ハードボイルドな主人公がピンチを脱出する

そんな“わかりやすいアクション物”ばかりを借りて見て満足そうにしている。

 

 *

 

「もう、(最新作は)ほとんど見てしまったなぁ。借りたいもんがないなぁ」

ちょっと寂しそうに隆夫さんが言った。

 

どうやら何かを借りて見たいようだ。

 

「マッドマックス4はどう?」

僕は提案した。

 

我が家のテレビは50インチ以上ある。

なかなかの大画面なので、迫力ある映像が見られる。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は映画館で観てとても面白かったので、いつの日かDVDでも見たいと思っていた。

 

「マッドマックスか、ええなぁ。古いのは見たことあるで。一緒に見ようか。借りてきてくれ」

珍しい。

隆夫さんがとても乗り気になっている。

これは思わぬところで孝行できそうだ。

 

僕は気分良くレンタルビデオ屋に出かけた。

 

 *

 

夕飯を食べ、DVDを再生した。

 

見始めて5分。

 

画面では大迫力のカーチェイスが繰り広げられている。

『怒りのデス・ロード』は、この“極力CGに頼らないで撮影した”といわれるカーチェイスが最大の魅力だ。

 

とーー

 

呆れた口調で隆夫さんが言った。

 

「よう、まぁ、こんな気が狂ったようなことしとるな」

 

……え?

 

「ありゃりゃ、また死んだな」

 

……そりゃそうだろ?

 

死人の出ないアクション物なんて見たことないぞ

 

「あぁ、また車がダメになった。なんちゅうことだ」

 

……これも普通だろ?

 

車が爆発しないマッドマックスなんてマッドマックスじゃねーし

 

「見とって頭がおかしくなりそうな映画だなぁ」

 

……

 

そう言って隆夫さんは横になって目を閉じてしまった。

 

映画が始まって10分のところだ。

 

 

おおおおおぉぉぉぉぉぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!

 

寝るのかよおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!

 

これってアクション物の王道みたいなことじゃないんですかあああああぁぁぁぁぁ!!!!!

 

死人が出ちゃダメなんですかあああああぁぁぁぁぁ?????

 

車が壊れちゃダメなんですかあああああぁぁぁぁぁ?????

 

何が不満なんでしょう?????

 

一緒にDVDを見て!!!!!

親子団らんの時間を!!!!!

持とうかと思ってたんですけどおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!

 

 

その後、彼は90分ほど気持ちよさそうに熟睡された。

 

 *

 

お酒のせいですよね?

 

それとも……

僕のチョイスがダメでしたか?

 

 

残念ながら親孝行はならなかったようだ。

 

 

 

では、また。