ども、自分の記憶力を疑う岡田達也です。
米子に向かう前日。
出雲大社という駅名が目に留まった僕は
父・隆夫さんに声をかけた。
「僕の名前は出雲大社で選ばれたんだよね?」
目の前で、だらしなく横たわってテレビを見ているこの人も、一応、僕の父親なのだ。
母・秀子さんが仲代達矢さんが好きだったことも
祖母・愛子さんが出雲大社まで行ってくれたことも知ってるだろう。
それに……
親ならば、多少なりの思い入れがあるに違いない。
*
「僕の名前は出雲大社で選ばれたんだよね?」
「は?」
この反応で、早くも嫌な予感はした。
「……僕の名前は、おばあちゃんが、出雲大社まで行って、神主さんに選んでもらったんだよね?」
「知らんで」
「!」
「そんな話、初めて聞いた」
「いやいやいや、待って待って待って待って! おばあちゃんから直接聞いたぞ!」
「んじゃ、そうだろうで」
まるで他人事
まるで興味なし
あなたは名前を考える家族会議的なものに参加しなかったんですか?
それとも、秀子さんと愛子さんに邪魔者扱いされていて仲間外れにされたんですか?
「……あのさ、僕の名前の候補って3つあったんだよね? 「達也」以外は何だったの?」
「3つ?」
「そう! 3つ!」
「へぇ、そんなにあったんか?」
「ぎ、ぎ、疑問形ですか!!!」
「知らんかった」
「おばあちゃんからそうやって聞いたぞ!」
「んじゃ、そうだろうで」
「……」
繰り返します
あなたは名前を考える家族会議的なものに参加しなかったんですか?
それとも、秀子さんと愛子さんに邪魔者扱いされていて仲間外れにされたんですか?
*
まぁ、いい
隆夫さんのこんな発言くらいは想定内だ
むしろ、詳細を覚えている方が、彼らしくないだろう
だからちょうどいい
*
ここから、いよいよ、この話の核心に入っていく
*
あまりに興味のない態度に、僕は一抹の不安を感じた。
……この人、ひょっとすると
僕の名前が、なぜ「達也」になったのかも知らないんじゃないだろうか?
「ねぇ」
「なんだ?」
「どうして「達也」になったか知ってる?」
「それくらいは知っとるで」
「なんだ?」
「お母さん(秀子さん)が、三橋達也のファンだったけな」
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つづく