ども、日本語のヒアリングはできる岡田達也です。

 

 

 

『ふるさと祭り東京』でのこと。

 

おそらく欧米人であろう2人組の男性が店の前を通りかかった。

1人は髭、1人はメガネだ。

 

 *

 

僕は英語を中・高・大と10年間学んだ実績がある。

もちろん授業中は英語以外のことを考えていたので何も身に付いていないが

それでも

ロンドンに行って芝居も観たし

ラスベガスでスロットも打てた。

(……ん?)

 

つまり10年間かけてわかったのは

「英語は理解できなくとも、心意気があればなんとかなる」

ということだ。

 

 *

 

不思議そうにお店を覗き込む2人に声をかけた。

「プラムワイン! プラムワイン! テイスティング! カムヒア!」

 

「……plum?」

 

「イエス! プラムワイン!」

 

かろうじて通じたらしい。

2人は僕に近寄り、試飲用のカップを手にした。

 

ここまでくれば一安心。

言葉は通じなくても英語表記のメニューが用意してあるので、

それを手渡して、それを指さしながら飲んでもらえばいい。

 

僕は2人に梅酒を注いだ。

 

「Oh! …………………………!」

「Yes! …………………………!」

 

2人は何やら感想を言い合った。

 

僕が真面目に授業を受けていれば聞き取れたのかもしれないが

残念ながら僕に理解できたのは「英語だ」ということだけだった。

 

何種類か注いだ後、『りんご梅酒』を飲んでもらった。

 

髭の方が食いついた。

「apple?」

 

「イエス! アップルフレーバー!」

 

彼は気に入ったらしく

「this one」

と、りんご梅酒の購入を決めてくれた。

 

ここで僕は思い出した。

梅酒には300mlと720mlの2つのサイズが有り

りんご梅酒の300mlはすでに売り切れていて、大きなサイズしか残っていないことに。 

 

「スモールサイズ ソウルドアウト! ビッグサイズオンリー!」

 

と……

髭が突然、流暢な日本語で言い放った。

 

「エェ? ソリャ ザンネンダ! キョウハ リンゴウメシュノ チイサイサイズヲカウタメニ ココニキタヨウナモンナノニ!」

 

僕は瞬時に彼の肩をはたいた。

反射的にはたいてしまったのだ。

そして当然、こう言った。

 

「なんでやねん!」

 

 *

 

「なんでやねん!」

実に便利な言葉だ。

いろんな意味を包括してくれている。

 

「この店に来るの初めてなくせに「りんご梅酒の小さいサイズを買いに来たようなもんなのに」という秀逸なボケが瞬時に日本語で出てくるっておかしいだろ!」

をまとめて

「なんでやねん!」

で済ますことができる。

 

 *

 

ツッコまれた彼は僕にこう言った。

「イイツッコミデス!」

 

僕はもう一度、彼をはたいて言った。

「サンキュー、サンキュー! ……って、なんでやねん!」

 

髭の彼は満足そうに笑って言った。

「ジツハ ボクタチ エイゴノキョウシヤッテマスネン! ニホンゴペラペラデスネン!」

 

「ネンってなんだよ!」

 

彼の見事な切り返しに僕は笑いが止まらなかった。

 

 *

 

僕が英語を理解できなくとも

きっちり勉強した人のほうが寄ってきてくれますねん

そんなこともありますねん

 

……という話でした。

 

 

 

では、また。