ども、正直に言うと普段は梅酒を飲まない岡田達也です。
今から20年ほど前のこと。
突然思いたって
浅草まで出かけてお店を冷やかし
ガイドブックに載っていた“知る人ぞ知る”という老舗の鰻屋さんに入った。
(まだスマホじゃないのよ)
僕も30歳になった頃だから、なんとなく気分的には大人に差し掛かっていたのだろう。
普段は食べないくせに、鰻なんか食べてみようと思ったのだ。
こじんまりとして、雰囲気の良い店構え
頑固そうな主人の顔……
30歳の小僧には全ての敷居が高く感じられたけど、ここでひるむわけにはいかない。
「鰻なんて食べ慣れてますけど。なんなら週に3日は鰻ですけど。えぇ、若造ですが鰻にはうるさいんですけど。何か?」
みたいな空気を醸し出さなければ、あの頑固そうな主人に負けてしまう。
どうすればいいか?
まずは……
余裕をかましながら瓶ビールを頼むことが大事だ。
この
「ビールを頼んでからの、主人との何気ない会話を楽しみながら、今日、食すものを決める」
という、実に大人っぽいやり取りが決まれば言うこと無いぞ
……そう考えた僕は瓶ビールを注文した。
奥さんらしき人がビールを持ってきてくれた。
僕は静かにコップにビールを注いだ。
一口、呑んだ。
良い頃合いだろう。
僕は主人に声をかけた。
「こちらのオススメは何ですか?」
いい
実にいい
自分で言うのもなんだが
とてもスマートな行動で、しかも大人の立ち振舞ができている。
我ながら上出来だ。
すると……
主人が言い放った。
「自分の食べたいものくらい、自分で決めな!」
……
……
僕の短い鼻は見事に折られた。
断っておくが、別に主人が怒っていたわけじゃない。
無愛想だったけど、嫌味ではなく、本気でそう言っていたことを付け加えておく。
* * *
『ふるさと祭り東京』
今、僕たちは梅酒とみかん酒を試飲販売しているのだけど
最も多く聞かれるのが
「オススメはなんですか?」
というもの。
そりゃ聞きたくもなるだろう。
梅酒は13種類、みかん酒は10種類もあるのだ。
どれが美味しいかなんてわからないだろうし
となれば、お店の人間に訊ねるのが手っ取り早い。
ただ。
お酒は嗜好品。
絶対的に、圧倒的に、嗜好品。
人それぞれの好みがある。
その好みは違う。
絶対に違う。
だからといって
「自分の飲みたいものくらい自分で決めな!」
なんてことは言わない。
「オススメはどれですか?」
と訊かれて
僕が必ず
「全部オススメ!」
と答えているのは、けっして意地悪してるわけではない
……ということを理解してほしい。
必ず、あなたの好みに合ったお酒を探すので。
うちのソムリエたちは全員それができるので。
どうか安心して任せてほしい。
た だ し
あなたの好みを言葉にして伝えてもらえたら、より早く見つけることができます。
そうです。
それがお店とお客のコミュニケーションです。
酒のかまくらは、品質とコミュニケーションで勝負してますから。
では、また。
追伸
すみませんが私は所用で、本日もドームをお休みすることになりました。
予定を立ててくださったみなさま、申し訳ありません。
明日、明後日は行けると思いますので。