ども、運転手岡田達也です。
『天国から北へ3キロ』には
福本さんとのやり取り以外にもいろんな思い出話がある。
*
このお芝居、東京公演の前に名古屋公演があった。
大道具は平ボディの4tトラックに
音響、照明、小道具などはアルミの2tトラックに載せて運搬したのだが……
さてさて
トラックの運転手に指名されたのは
4tは上川隆也先輩
2tは僕だった。
当時、キャラメルボックスの関係者でトラックの運転ができたのが上川さんだけで
しかもこの公演には出演していなかったので体が空いていたこと
この公演の舞台監督さんが
「そういえば岡田達也の前職はトラックドライバーだったよな」
と気付いてしまったこと
以上のような理由で2人が指名された。
2人は東名高速をトラックで並走した。
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名古屋に着いて荷物をおろし仕込みをしたあと
僕は黒子の仕事があるのでそのまま居残り
上川さんはお役御免となって再びトラックで東京に戻るはずだった。
と。
照明プランのKさんがすがるような声で言った。
「かみかわ~、ピンやっていってくれよぅ!」
ピンとは『ピンスポットライト』のことで
客席の一番後ろだったり
劇場の天井近くから
舞台上の俳優の顔や姿を直接照らす照明機材のこと。
この辺りの記憶がちょっと曖昧でもうしわけないけど……
最初はピンを入れる予定が無かったのか
はたまた
最初にお願いするはずだった照明スタッフさんの都合が急に悪くなったのか
とにかく
“その場で突然ピンを依頼する”なんて普通ではありえない話だ。
だが、これは間違いなくあった事実だ。
僕の記憶が正しければ
最初、上川さんは渋っていたように思う。
どうせなら俳優としてこの公演に参加したかっただろうし
予定になかったスタッフワークまで仰せつかるなんて想像もしてなかったろうから気持ちはわかる。
が……。
舞台監督のMさんも特有の高い声で言った。
「そうだよぅ。ピンをやって、そのまま名古屋にいて、バラシもやって、またトラック運転して帰ればいいじゃん(笑)」
プロデューサーである加藤昌史からのプッシュも入った。
「上川、頼むよ!」
トドメは照明のKさんの一言だった。
「大丈夫、大丈夫! 着替えのパンツは俺が買ってやるから!」
こうして先輩はパンツで押し切られた。
*
そして名古屋が終わって東京への帰り道。
これが僕とたかやん先輩にとって
「人生の中でもそうそう経験することはないであろうタフな道中」
になってしまうのだが……
これ、長文も長文になるのでまたゆっくり時間があるときにでも書きます。
では、また。