ども、我が目を疑った岡田達也です。

 

 

 

今、僕は京都に来ている。

『エンジェルボール』の仕込みのためだ。

発注していた音響さんが来られなくなってので、急きょ、駆り出されることになった。

 

 *

 

3日前。

12時54分鳥取発京都行きの『スーパーはくと8号』の切符を購入した。

 

だが。

大雨の影響で、鳥取〜智頭間は直接走れないため

その区間だけは振替輸送でバスが用意されているという。

「バスは鳥取駅の南口から出ます。12時20分に発車予定です。11時50分より乗車できますので」

 

そうだよな

バスのほうが多少時間がかかるのは当たり前か……

 

 *

 

昨日。

お昼ご飯も食べたいし、少し早めに鳥取駅に行くことにした。

 

父・隆夫さんが駅まで送ってくれるという。

僕たちは11時過ぎに鳥取駅に着いた。

 

「劇団の仕事、しっかり手伝ってきんさい」

隆夫さんが励ましの言葉をかけてくれた。

 

「ありがとう」

 

「にしても暑いわい。こりゃすぐに帰ってクーラーの効いとる部屋でジッとしとらな死ぬ」

そう言って車に乗り込み帰っていった。

 

 *

 

念のため、駅の窓口に向かった。

 

なんと

本日より「因美線全線復旧」とあるじゃないか!

 

なんという偶然

なんという幸運

 

良かった。

復旧作業を頑張ってくれたんだなぁ。

これは感謝しなければ。

おかげで鳥取から京都まで座ったまま行ける。

 

駅員さんに確かめる。

『スーパーはくと』は当初の予定通り、12時54分発車になるらしい。

 

 

となると……

現在は11時過ぎだ。

発車まで2時間弱ある。

微妙に時間が空いてしまった。

 

そうだ!

1時間ほどパチンコに行こう!

パチンコを打ちながら、お昼に食べたいものをしっかりと考えよう!

で、残り時間でお昼を食べよう!

そうしよう、そうしよう!

ナイスアイディア!

 

「バカにつける薬はない」

生前、母・秀子さんが僕に向かって放った一言が頭をよぎったが

僕はそれに気付かないフリをして

駅前の『グランワールドカップ』という3階建ての大型店に入った。

 

万が一、爆発してはいけない。

途中やめになったら悔やんでも悔やみきれない。

 

僕は慎重に考え

スロット、4パチ、ミドルスペックなどを避け

1パチのライトスペック(1/99.9)を打つことにした。

(わからない人、スミマセン)

 

これなら大勝ちも大負けもしないですむ。

 

 *

 

案の定、押し引きとなった。

“出ては飲まれ”を繰り返しているうちに、お昼を食べている時間が無くなってきた。

 

まぁ、いい

無理して食べていかなくても、駅弁ですませれば。

 

僕はギリギリまで粘り、12時30分に打つのをやめた。

 

球を数えてもらった。

2,000発とちょっとあった。

 

1,600円の投資で、2,000円になったということだ。

つまり90分で400円勝ち。

 

なんともギャンブラーらしからぬつまらぬ勝負をしてしまった。

が、良いではないか。

最初からそのつもりで打ったんだから。

 

 *

 

僕は1階の景品交換所に向かった。

 

と……

目の前から知った顔が歩いてきた。

僕は飛び上がるほど驚いた。

 

向こうも驚いている。

が。

すぐに相好を崩し、良い笑顔になった。

 

「エッへへへ。2万8千円ほど勝ったけなぁ。これで引き上げるとするわい。深追いしたらいけん、いけん。今は二人とも倹約せないけんときだし」

 

「……」

 

「あれ? 12時過ぎに出るんじゃなかったか?」

 

「今日から全線開通で12時54分になった」

 

「劇団の仕事、しっかり手伝ってきんさい」

父・隆夫さんが再び励ましの言葉をかけて去っていった。

 

 

僕はパチンコ屋の景品交換所の前で立ち尽くした。

 

……

……

 

あ!

そういうことか!

 

僕は気付いた。

 

「あ、あのオヤジ、最初から俺を送ってパチンコに来るつもりだったんだ! だから出かけに髭も剃ってないのにアフターシェーブローションを顔に塗りたくってたんだ!」

 

 

 

では、また。