ども、壁役の岡田達也です。
これは私見だ。
そして
とても乱暴な意見だということもわかっている。
“おしゃべりな人ほど「私はおしゃべりじゃない」と言う”
……いや
“言う”どころではない
“力いっぱい否定する”という表現が正しい。
*
父・隆夫さんの姉(鳥取県倉吉市在住)はとても元気だ。
86歳だが病気一つせず健康に暮らしている。
6人姉弟の長女だけあって面倒見も良く
弟や妹たちが無事に成長できたのは彼女の頑張りがあったからと言っていい。
(ま、隆夫さんだけはやや歪んでしまったが)
さておき。
甥や姪のことも何かと気をかけてくれる人で
僕もこの叔母には子供の頃から大変お世話になっている。
大人になった今でも
お好み焼き屋が開けそうなほどの長いもを送ってもらったり
惣菜屋が開けそうなほどの冷凍コロッケを送ってもらっている。
(40個だぞ、40個。冷凍庫に入り切らんわ)
このように頭が上がらない人だ。
ちょっと用事があって、そんな豪快な叔母の家に行った。
*
この叔母、よくしゃべる。
そのしゃべりには勢いがある。
球速に例えたら150kmは超えている。
いや、
ひょっとするとウィンブルドンを制したジョコビッチのサーブよりも速いかもしれない。
最初の10分くらいはちゃんと相づちをうっていたのだが、そのうち追いつかなくなってきた。
僕は試しに「うん、うん」と言う回数を減らしてみた。
30分が経過した。
叔母の話は続いている。
どうやら僕の相づちが少なくても問題はなさそうだ。
僕はNHKの相撲中継にちょっとだけ意識を集中させた。
1時間が経過した。
「そいでなぁ、みっちゃんが言うだが。「よっちゃん、それはいけんわいな」って(笑)」
……みっちゃん?
……よっちゃん?
し、しまった
聞き逃してしもた
知らぬ間に“新たな登場人物”が活躍を始めているじゃないか!
僕は試しに
「そうだなぁ」
とだけ言ってみた。
その「そうだなぁ」は
叔母のどの話題に向けられたものなのか?
自分でもまったく判断ができない。
本当に宙ぶらりんな相づちだった。
が。
「なぁ、そう思うだろ?(笑)」
叔母は事も無げに言った。
2時間が経過した。
僕は、初めて、能動的な意見を、こちらから、言ってみた。
「……おばちゃん、ようしゃべるな」
叔母は驚いた表情を浮かべた。
「ええっ?」
え?
驚くの?
「そんなことあらせんで!」
否定するの?
「うちがおしゃべりだったら、世の中、どうなるだ?」
それはこっちが聞きたいよ
「あんた、よく言うわ!」
そうかなぁ?
「おちはおしゃべりじゃあらせん! 絶対に!」
そんなに怒らなくても……
*
僕はおしゃべりが悪いとは思わない。
それは個性だ。
だけど
おしゃべりな人にとってはそうでもないらしい。
叔母に限らず、否定する人が多い。
「私はよくしゃべる」という自覚がある人は非常に少ない。
これがとても不思議な現象だ
と、昔から思っている。
……と思うのは僕だけだろうか?
では、また。