ども、明日の本番を迎えるにあたって不安要素が多い岡田達也です。

 

 

 

『無伴奏ソナタ』

大町公演を終え、木曽に移動。

 

 

見渡す限りの山の中。

周りには雄大な自然と、キレイな芝生と、ゴルフ場が2つ。

そもそも人の姿を見かけない。

 

一体、この地のどこに高校生がいるのか?

いや、高校生じゃなくてもいい。

人はどこにいるのだ?

とても不思議だが

とにかく明日は本番をやる予定なので、どこからか来てくれるのだろう。

 

 *
 

『木曽文化ホール』というところで公演を行う。

本当に自然に囲まれた中にポツンと立っている。

 

そしてそのホールの隣に、我々が宿泊している宿がある。

 

つまり

ホールを利用する者が、専用で宿泊する宿のようだ。

旅館でもなく、ホテルでもない

ちょっと不思議で変わった作り。

 

 

大町で公演を終え木曽に向けてを出発するとき、制作のUさんに言われた。

「達也さん、木曽では相部屋になります。お相手は筒井さんです」


筒井俊作は良いやつだ。

 

優しいし、気遣いもできる。

声も大きいし、滑舌も良い。

見た目も大きく、キャラ立ちしている。

 

芝居を作るときに筒井が一人いれば大抵のものは作れてしまう。

今では劇団の「神」と呼ばれているくらいだ。

 

だが……

彼はよくしゃべる。

 

喋る

しゃべる

syaberu

シャベル

 

仕込みの最中

「筒井、うるさい」

と、注意される声が何度聞こえてくることか。

 

筒井と3日一緒に過ごせばお腹いっぱいになる。

半年は会わなくて大丈夫だ。

 

その不安が顔に出てしまったのだろうか?

返事が一瞬遅れた。

「……うん、わかった」

 

「あれ? お嫌でしたか?」

 

「いやいや、そうじゃないよ」

 

「どうしてもということでしたら、多田さんか、山﨑くんと代わってもらいますけど」

 

「いや、本当に大丈夫だから」

 

 *

 

木曽に着いた。

部屋に入った。

壁の一部が薄いパーテーションになっていて、隣の部屋と区切られていた。

 

パーテーションを叩いてみた。

「は~い」

多田直人の声が聞こえた。

どうやら隣が多田と山﨑の部屋らしい。

 

僕はコンビニで買ってきたハイボールを冷やそうと冷蔵庫を探した。

ところが……

あろうことか僕の部屋には冷蔵庫がどこにもなかった。

 

そんなバカな!

冷蔵庫がないだと?

 

ビールも酎ハイもハイボールも、圧倒的に冷たいものが好きなのだ。

「ぬるい温度が旨い」と言われているギネスビールだって僕はキンキンに冷やして飲む。

世の中の常識と、僕の常識は違う。

 

冷蔵庫が無いというのは、僕にとって死を意味する。

 

隣の部屋を覗いてみた。

 

ある

ある

冷蔵庫があるじゃないか!

 

なんでだよ?

なんで俺たちにはなくて、こちらにはあるのだ?

 

山﨑が言った。

「ここ、本当は一部屋なんじゃないですか? それを無理やりパーテーションで仕切ってるだけなんじゃないかと」

 

なるほど

そうかもな

 

筒井が言った。

「達也さん、パーテーション取っ払っちゃって4人部屋にします? そうしたら冷蔵庫も手に入るし(ニヤニヤ)」

 

ええっ?

 

筒井のおしゃべりだけじゃなく

多田直人の変態話まで聞かなきゃいけないのか?

さらには

専有面積がでかい山﨑と一緒だと?

 

冷蔵庫は欲しいよ

が……

そんな4人部屋、想像するだけで恐ろしいわ!

 

「いや、今回はーー」

そう口にしようとした。

 

「ジャー、バタン、バタン」

すでにパーテーションは動かされ開き始めていた。

 

筒井の仕事は早い。

 

数秒後。

4人部屋は完成していた。

 

 *

 

今日から二日間

アクシデントも、間違いも、騒動も、事件も、乱闘も

何も起きないことを切に祈る。

 

どうかみなさんも祈っててほしい

僕の無事を。

 

 

 

では、また。