ども、岡田達也です。

 

 

 

“生きていく”ってのはいろいろと大変だ。

 

思うようにいかないことも

しんどいことも

キツイこともたくさんある。

 

 *

 

キャラメルボックスの稽古場近くに小さなスーパーがある。

コンビニよりも値段が安く、よく利用している。

特に缶コーヒーが100円を切る値段で売っているのがありがたい。

 

稽古の休憩時間になった。

いろいろと芝居のことを考えて、頭が糖分を欲していた。

(腹回りは糖分を欲していないが)

僕は缶コーヒーを買いに行った。

 

普段、缶コーヒーを飲むならジョージアの『エメラルドマウンテンブレンド』をチョイスする。

が、昨日は、珍しく気分が違ってBOSSの『カフェオレ』が飲みたくなった。

 

 *

 

缶コーヒー売り場に向かって歩いていると

店員さん(50歳前後 男性)が

パン売り場のコーナーで

配送されたパンを棚に並べていた。

 

その彼が、パンを並べながら、独り言をつぶやいた。

「はあぁぁぁ~、キッツいなぁ」

 

僕は思わず笑ってしまった。

 

その重さ

そのトーン

聞いてるこちらに染み入るほど、実感のこもった独り言。

 

“僕もあんなふうにセリフをしゃべってみたいぞ”

そう思わせる力を持った言葉だった。

 

 *

 

僕はカフェオレを手にし、レジへ向かった。

パンを並べていたおじさんがレジの中に入った。

カフェオレは税込みで89円。

 

僕は財布を開いた。

指で小銭をかき分けてみたが100円玉は見つからなかった。

 

その動きが悪かったのかもしれない。

 

僕が

小銭を探している姿を見て

おじさんは

100円玉が出てくると確信したらしく

「100円」とレジを打った。

 

この時点で、僕は、まだ、お金を渡していない。

 

おじさんは

続けてお会計を押し

「お釣り 11円」と表示された。

 

僕の財布に100円玉は無いのだ。

仕方がないので僕は「すみません、これしかなくて」と言いながら千円札を出した。

 

おじさんは、思ってもいなかった金額が出てきて驚いてしまったのだろう。

レジはすでに打ってしまっているのでキャンセルできない。

「え~っと、え~っと、だから……」

暗算を始めた。

 

1000-89=911

 

そんなに難しい引き算ではないと思う。

少し遠回りになるが「表示されている11円に900円を足す」という考え方でも良い。

 

が、突然の出来事は人をパニックに陥れる。

数秒間、計算したものの、結局911円という答えが出てこなかった。

 

「ちょっと待っててくださいね」

おじさんはそう言って電卓を取りに行き、計算を始めた。

 

「あ、やっぱり、そうか! そりゃそうだよな」

おじさんは苦笑しながら僕に言った。

「ってことは911円のお返しですね(笑)」

 

「ですね(笑)」

僕もつられて笑った。

 

僕は商品とお釣りを受けとり、レジを離れた。

 

次の瞬間

背後でおじさんの独り言が聞こえた。

 

「はあぁぁぁ~、キッツいなぁ」

 

 *

 

“生きていく”ってのはいろいろと大変だ。

 

思うようにいかないことも

しんどいことも

キツイこともたくさんある。

 

 

お互い、頑張って生きていきましょうね。

 
 
 
では、また。