ども、喉の治療費に払った額は半端ないと思われる岡田達也です。

 

 

 

『無伴奏ソナタ』

昨日、劇中の歌を練習しながら、フト、背中に寒いものを感じた。

 

「そういえば、今回は学校公演があるぞ。何時開演だったっけ? 確かものすごく早かった気がする……」

 

 *

 

よく耳にする話。

プロ野球の投手が、朝、目が覚めたとき

まず最初にやることは

肩や肘に痛みがあるかないかを確認することらしい。

それは身体を起こす前、つまりベッドの中にいる状態で、だ。

で、痛みが無ければホッとして一日が始まる。

少しでも違和感があれば「これはマズい」となる。

特に一度でも故障を経験した選手ならなおさらデリケートにならざるを得ない。

 

役者も同じだ。

特に舞台俳優は喉を使う。

酷使と言っていい。

だから役者が、朝、目が覚めたとき

まず最初にやることは

小さな声でいいから喉が嗄れてないかどうかを確認することだ。

もちろんベッドの中で。

 

断っておくが、これは僕だけじゃない。

多くの役者が同じ悩みを抱え、同じ行動を取っている。

 

想像してほしい。

大の大人が、目が覚めた瞬間に

ベッドの中でもぞもぞしながら

「んん、んん」とか

「あ~、あ~」とか

「う~、う~」とか

喉を鳴らしている姿を。

なんとも滑稽だ。

 

しかし。

我々にとっては死活問題なのだ。

 

音を出そうとして、かすれた息しか出ないときの恐怖!

 

まず最初に

「まずいよまずいよまずいよまずいよまずいよまずいよまずいよまずいよまずいよ」

って思って

 

次に

「ヤバイよヤバイよヤバイよヤバイよヤバイよヤバイよヤバイよヤバイよヤバイよ」

って思って

 

次に

「今日、何時開演だっけ? 間に合うのか、自分? 出せるのか、自分? イケるのか、自分?」

と、今の状態からどれほどの回復が見込めるのかの逆算を始め

 

次に

「キープしてある薬があったはずだ。トランサミン(喉の消炎剤)とムコソルバン(痰切り)はこの間もらったし。でも、デカドロン(ステロイドホルモン。役者にとって最後の切り札)は今はないな」

と確認し

 

次に

「え~い! 声が出ようが出まいがやるしかないわ!」

と恐怖に震える自分を鼓舞し

 

それからやっと身体を起こす。

 

稽古中はともかく

本番中はこれが毎日続くのだ。

 

……すごいでしょ?

 

 *

 

ちなみに僕の場合

最低でも開演時間の5時間前には起床していないと、身体も声帯もベストのところまで持っていけない。

 

 *

 

昨日、背中に寒気がして公演スケジュールを確認した。

 

学校公演の開演時間は10時15分開演だった。

 

え?

ってことは毎日5時起床?

で、その時間にベッドの中で「あ~、あ~」言うの?

 

……はたして5時に音が出るんだろうか?

 

筒井俊作が青い顔しながら言った。

「みなさん、毎日9時に寝ましょう」

 

みんなが真顔で頷いた。

 

 

あぁ

鉄の喉がほしいよぅ

 

 

 

では、また。