ども、『無伴奏ソナタ』の稽古が始まった岡田達也です。

 

 

 

昨日、読み合わせが行われた。

主役の多田直人が客演中で欠席だったため、作・演出の成井さんが代役を務めた。

 

……色んな意味で震えた。

 

この件についてはまた改めて書こうと思う。

 

 

 * * *

 

昨日のつづき。

 

 

超が付くほどの放任主義で育てられた僕だが

小学校6年生のとき、母・秀子さんに厳しく注文されたことがある。

 

“お箸の持ち方”についてだ。

 

ある日、突然、言い渡された。

「そろそろきちんとした箸の持ち方をしなさい」

 

えっ?

 

箸の使い方が正しくはないと薄々気付いてましたけど……

 

い、今ですか?

何で今日なんですか?

 

今食べてる卵焼きの味がわからなくなりそうです!!!

 

それまでの僕は、親指が跳ねていて、中指を使わない持ち方だった。

曲がりなりにもその持ち方で11年間生きてきたのだ。

いきなり箸の持ち方を正せと言われても難しい。

 

「中学に入る前には言おうって思ってたの」

 

いやいや

言うならもっと早く言ってくれれば良かったのに……

 

「テレビなんかでも食べるシーンがあるでしょ? 正しく箸を持てない人が食べていると、それだけで美味しくなさそうに見えるから不思議よね」

 

そういうものですかね?

 

「それに、あなた、調理人になりたいって言ってたじゃない? だったらなおさら直したほうが良いわよ」

 

そうなのだ。

小学6年生のとき、僕は料理の世界に進むのも良いなと考えていた。

 

だが……

親指と、人差し指と、中指で、箸を動かすだと?

 

う~ん

う~ん

 

ゆ、指が

攣りそうなんですけど

 

それに、中指が邪魔で、どうやっても、箸の先が、合わないのですが

 

「そんなことない。ほら、私はできる」

 

あの~

食べにくくてしょうがないのですが

 

「仕方ないでしょ? あなたが今まで楽してきたんだから」

 

え~っ!

そんな言い方、あります?

 

「はいはい。良いから練習しなさい」

 

……

 

「いやだったら、ご飯食べなくていいから」

 

なんすか、それ?

母親の強権発動じゃないっすか!!!

 

 

僕はかなり不服だった。

が、小学6年生なんて腹が減ってしょうがない年頃なのだ。

渋々、挑戦し始めた。

 

そして一ヶ月後。

僕は正しい箸の持ち方で食べられるようになった。

 

 *

 

今ではすっかり秀子さんの言葉に影響され、テレビの食レポなどで箸が正しく使えない人を見かけると

「ダメだな、ありゃ」

と独り言を呟くような人間になった。

 

後輩の前田綾ちゃんに

「ちゃんとお箸を持てるようにしたほうが良いよ。そうしたらきっとお嫁に行けるから」

と何の根拠もない発言をして、彼女は見事に直した。

で、その数年後。

実際、彼女は結婚した。

 

……ま、箸の持ち方のおかげでは無いかもしれないが。

 

 *

 

お母さん

感謝してます

 

でもですね

もう少し早めに言ってもらえてれば、もうちょっと楽だった気もするんですよ

 

気のせいですかね?

 

 

 

では、また。