ども、今日も引っ張る岡田達也です。

 

 

 

昨日のつづき。

 

 *

 

抵抗も虚しく、僕は車の後部座席に放り込まれた。

 

「大人しくしろっ!」

背広男1が叫んだ。

 

 

僕は人生の終わりが来たのを感じた。

 

 *

 

仮に……

僕を羽交い締めした背広男のことを「ゴリさん」

僕の口をふさいだサングラスのことを「殿下」

としておこう。

(『太陽にほえろ!』ファンのみなさんごめんなさい。悪気はないです)

 

 *

 

ゴリさんは僕を後部座席に放り込み首根っこを押さえつけた。

殿下はドアを締めて、素早く運転席に座り、車を発進させた。

 

人生でこんな恐怖を味わったことは無い。

 

何かを言わなければ

何かをしなければ

頭ではわかってるのだが、体が動かない。

 

もしも……

僕がジャッキー・チェンなら

まずは車のドアを蹴破り

それを追ってきたゴリさんと車の屋根の上で戦い

スレスレのところでやっつけて

見事に車から振り落とし

次に

助手席の窓から侵入し

運転している殿下にパンチを叩き込み

すると殿下はナイフを取り出してこちらを突いてきて

その攻撃を紙一重でかわし

見事な逆転劇でやっつけて

フロントガラスを叩き割りそこから放り出して

なんとか僕が車のハンドルを握り

「フーッ。危なかった」

と、セリフを呟いていただろう。

 

だが……

残念なことに僕はジャッキー・チェンじゃなかった。

オマケに

このシチュエーションは映画でもなかった。

 

どうやら僕のような凡人は

極度の緊張状態に置かれると動けなくなるものらしい。

僕はこのときに学習した。

 

 

もうダメかもしれない。

 

でも、何で僕なんだ?

 

僕が誘拐される理由は何だ?

 

何かあるはず

 

何かが

 

それが突破口に繋がるかも

 


僕はしゃべるのを諦めて

頭の中をフル回転させ始めた……

 

 

 

つづく