ども、仕事収めの岡田達也です。

 

 

 

キャラメルボックスの元劇団員・細見大輔が率いる

ナ・ポリプロピレン公演『アックーノの逆襲』に日替わりゲストとして出演してきた。

 

「日替わりゲスト」ってのはあくまでもゲストであってオモチャではない

……と毎年声を大にして言っている。

どう考えても扱いがおかしい。

そんな現場なのだ。

 

それでもスケジュールの都合が付けば出演してしまう。

 

大の大人たちが

しかも芝居巧者な俳優たちばかりが

小劇場界の強者たちが

汗だくになって、全力で歌い、踊り、バカをやっている。

それだけでも一見の価値がある。

(福本伸一さんのダンスのキレには心底感心しました。あの人、56歳でっせ。恐ろしいわ)

 

 

それに……

細見大輔に頼まれたら断れないってとこもあったりする。

 

 *

 

2009年3月

『すべての風景の中にあなたがいます』

というお芝居をやっているときのこと。

 

このお芝居の上演時間は60分

僕は30分経過したところで一度ハケてくるけど

それ以外は舞台上に出ずっぱりの芝居だった。

 

そのときの舞台上のパートナーが細見だった。

細見が聞き手となり、僕に話をさせながら、物語を転がしていく。

そういうコンビだった。

 

ある日。

冒頭、細見と2人だけのシーンが5分ほどあって、その後にダンスシーンがやってきた。

そのダンスの最中、僕の左脚から「ブチッ」という音が聞こえた。

 

音?

脚から?

そんなバカな

なんてことを一瞬思ったのだけど

次の瞬間にはそれがケガだと認識できた。

 

左脚が、まったく動かせないのだ。

 

いや、引きずればなんとか動かせる。

だけど、それは這うようなスピードでしか移動できない。

とにかく痛い。

歩こうとするとふくらはぎに激痛が走る。

 

どうしよう……

袖にハケたくても後30分は無理だ……

このまま芝居を続行するしかないのか?

 

あの瞬間の恐怖は今でも忘れられない。

永いこと芝居をやっているが

“払い戻しでも何でもするからそれでも芝居を止めさせてくれ”

という思いが頭をよぎったのはあのときだけだ。

 

ダンスが終わって再び細見と2人だけのシーンになった。

一緒にいる細見は僕の異変にすぐに気付いた。

当たり前だ。

僕は決められた動線や立ち位置をまったく無視して、極力動かないように勝手に芝居を変えていたのだから。

 

細見の目が「大丈夫ですか?」と言ってるのがわかる。

鬼のような形相をしている。

「ごめん」

こちらもそれに応えたい。

だけど舞台上には2人しかいないのだから、我々はセリフをしゃべり続けるしか無い。

 

それから数分後。

別の登場人物が出てきてそちらにセリフがまわり、やっと2人はオフの(目立たない)芝居になった。

 

細見はすぐに僕に顔を寄せてきて小声で囁いた。

「動かなくて大丈夫です。僕が合わせますんで。無理しないで」

それだけ言って芝居に戻った。

時間にして2秒ほどだろうか?

 

どんなケガかもわかってない。

こちらも説明する時間がない。

だから、コンタクトは最低限のそれだけ。

 

でも、十分だった。

それがどれだけ勇気付けてくれたか。

 

 *

 

細見がキャラメルボックスに在籍中は

舞台上だけでなくハンドブックでも妙なコンビをたくさん組んだ。

ふざけた2人だと怒られもした。

 

嫌がる僕に無理やり文章を書かせ、勝手にブログを始めたのも細見だ。

そういえば『達也汁』の名付け親もヤツだ。

 

僕はいつもこの後輩に振り回されている。

 

だけど

頼まれると断れない、頼もしくて楽しい後輩だったりする。

 

 

ご来場いただいたみなさん、ありがとうございました。

 

 

 

では、また。