ども、補聴器ならぬ補脳器があれば購入予定の岡田達也です。

 

 

 

昨日の続き。

 

 *

 

僕は父・隆夫さんに補聴器を買わせる決意をした。

 

だが……

噂で聞いたことがある。

「補聴器は慣れない人には苦痛だ」と。

コンビニ袋のカサカサ音やら、ある特定の周波数が、とても不快に聞こえると。

 

しかし。

今はそんなこと言っていられない。

お医者さんの話がキッチリ聞こえなくては、今後の対応を誤る可能性もある。

母・秀子さんには長生きしてもらわなければならない。

 

秀子さんが退院した日、家族会議が行われた。

 

僕  お父さん、補聴器を買いなさい

母  あぁ、良いわそれ!そうしてほしい!

父  ……補聴器なぁ

僕  嫌なのはわかるよ。でも、ここは一つ頼む。お医者さんの話が聞こえないとダメでしょ?

父  う~ん、でもなぁ

僕  何?

父  先生がもうちょっと大きな声で話してくれればすむじゃないか?

僕  ……え?

父  もうちょっと俺に気を使ってくれてもーー

僕  ……あのなぁ、先生はじゅうぶん気を使ってくれてるし、大きな声で話してくれてるよ

父  (拗ねた口調で)俺はそうは思わんけどな

僕  イジケても可愛くないで

母  お父さん、買おうって

父  ……そういうお母さんも最近耳が遠いで

母  私?

父  電話で話す声が大きくて大きくてう~るさいわいや

母  お父さんだっておおおぉぉきな声でしゃべりよるが

僕  ……

母  テレビのボリュームだっておおおぉぉきいが

父  お母さんだってーー

僕  もういい!

2人 ……

僕  2人まとめて補聴器買いなさい

 

どの家でもそうなのか?

補聴器を購入するだけでこんなに大変なものなのか?

 

数ヶ月後。

 

僕が帰省してみると上機嫌の隆夫さんがいた。

「補聴器、ええで。よう聞こえるで。まぁ、20万近くしたけな。聞こえてもらわんと困る(笑)」

 

あんなに嫌がっていたのに

聞こえるとなると上機嫌

しかも値段まで織り交ぜたギャグ

我が父ながら溜め息が出るほど下世話だ

 

でもまぁ、隆夫さんは補聴器を購入してくれたのだ。

一安心ではある。

 

そして。

父から遅れること一年ほどで

秀子さんも補聴器を購入した。

 

めでたし、めでたし

 

……のはずだった。

 

 

 

つづく

 

 

 

追伸

最近、一話が長くてごめんなさいね。