ども、物持ちが良い岡田達也です。
小学生のとき。
欽ちゃん(萩本欽一さんのことです)に
1円玉や5円玉をプレゼントをしようと集め始めた。
そう、24時間テレビの影響だ。
親の小銭をせびり取り、空き瓶にチャリンチャリンと貯めていた。
中学生になったとき。
その小銭を見ていた祖母・愛子さんが僕に言った。
「それ、口座を作って貯金したら?そうすると利息も付くから、欽ちゃんも喜ぶでないか?」
こうして、僕は
“人生で初めて、自分で自分の口座を作る”
という魅力的な体験をすることになった。
母・秀子さんも人生勉強だと思ったのだろう。
「じゃあ、この印鑑で作ってきなさい。で、そのハンコはあなたのものだから大切に保管しなさいよ」
そう言って一本の印鑑を渡してくれた。
「自分の印鑑を持つ」
そのことが妙に大人びた行為に感じられたことを覚えている。
そして、それがちょっぴり嬉しかった。
*
1994年。
『大地の子』というテレビドラマの長期ロケのため、上川隆也先輩が中国に渡った。
半年後。
帰国したたかやん先輩は劇団員全員にお土産をくれた。
立派な、立派な、印鑑だった。
どうやらメンバー1人1人のイメージに合わせたらしく
なんと、それぞれが違う素材で作られていた。
その気遣いもセンスもすごいし有り難い。
が。
26歳の僕にはその印鑑が立派すぎて、使うのが勿体なく感じられた。
(ちなみに僕のは瑪瑙石で作られた直径18mm!)
だから、何となく思った。
「この立派な印鑑は、僕が立派な大人になって、このハンコに相応しい人間になったら使おう」
そう決めた。
*
結局、僕は立派な大人になれないままでいる。
(……もうすぐ50歳だろ。大丈夫なのか?)
が。
母が亡くなり、いろんな場面で僕の印鑑証明が必要となったときにピンときた。
あ!
これは間違いなく……
たかやん先輩の印鑑の出番じゃないか!
きっとそうだ!
あのハンコは、この日のために取ってあったんだ!
こうして僕は、恥ずかしながらこの年齢で“はじめての実印登録”を経験した。
まったくもって自分のおかげではないけど
ちょっとだけ大人になった気がした。
『はじめてのおつかい』は視聴率が良いようだが
『はじめてのじついんとうろく』は誰も見ない気がする。
では、また。