ども、運命を感じてしまった岡田達也です。

 

 

 

近所にペットショップができた。

 

こう見えて動物好きな男である。

後輩のことは力いっぱい虐待するが、動物は力いっぱい可愛がる。

いつも飼いたい誘惑と戦っている。

 

だが。

我が家はペット禁止だし、

そもそも芝居なんかやっていると留守にすることが多いので、犬も猫も飼うのは難しい。

 

だから行かなきゃ良かったのだ。

パトロールなどしなくて良かったのだ。

 

ところが。

気が付くと店内に足を踏み入れていた。

 

あ……

柴犬の子供がいる

しかも豆柴だ

しかも黒柴だ

 

オレの一番飼いたいやつじゃないか!!!

 

一緒のゲージの中にいる茶色の豆柴とギャンギャン遊んでいる。

かじり合い、取っ組み合い、ぬいぐるみをブンブン振り回す。

 

か、かわいい……

 

店内に相応しくない中年男性がゲージに張り付いているのを見て、店員さんも哀れに思ったのだろうか。

「抱っこしてみますか?」

と声をかけてくれた。

 

飼えない

それはわかっている。

だが、触ってみたい。

僕は「お願いします」と返事した。

 

ペットを飼っている人たちからよく聞かされる。

「目が合った瞬間に、こいつはオレを待っていたんだとわかった!」とか

「目が「連れて行ってください」って言ってた!」とか

「運命を感じたんだ!」など。

確かキャラメルボックスのOB・近江谷太朗先輩もそんなことを言っていた気がする。

「さくら(先輩のワンちゃんの名前)は、オレを待っていたんだ」とかなんとか。

 

僕はそんな言葉を聞かされるたびに

「何寝言を言ってるんだ?ないない、ないない。それは人間が都合良く解釈してるだけ」

と、どこか冷ややかな反応を見せていた。

 

 

黒い豆柴が手元に渡された。

抱っこした。

目が合った。

 

……

……

 

あ、あれ?

ひょっとしてコイツ……

 

「僕を連れて行ってください」って言ってる?

 

 

そうだよね?

言ってるよね?

 

あ~!!!!!

あぶない、あぶない!!!!!

 

ダメだよ!

ダメ、ダメ!

 

申し訳ないけど我が家はペット禁止なの!

それにオレはしがない舞台俳優なの!

稼ぎは悪いし、旅には行くし、酒も飲むし!

 

キミなんか飼ったら家から出なくなっちゃうよ!

そしたら稼げなくなっちゃうよ!

 

「ちなみにお値段はいくらですか?」

 

……何を訊いてるんだ、自分

 

「ワンちゃんが80万円で……」

 

え?え?え?

ごめんなさいね

オレの聞き間違いかな?

は、はちじゅう?

 

「ええ。黒柴は赤柴に比べて3割くらいしか生まれないので、割高なんです」

 

そうなの?

 

「オマケに、この子はタヌキ顔でして。こちらの赤柴のキツネ顔に比べますと人気が高いんです」

 

人間のタヌキ顔は笑われるけど、犬の世界だと人気があるの?

 

「なので若干お高めにはなっております」

 

じゃ、じゃ、若干ね

 

「そのほかに保険ですとか、予防接種ですとか、なんだかんだで100万ちょっとになりますが……」

 

ひゃ、ひゃ、ひゃく!?

 

「大丈夫です。月々2万4千円の20回払いとかで組めますので」

 

そりゃそうだ

そりゃそうだよ

ローンてのはそういうもんだ

その理屈で言えば何でも手に入るよ

だけど「大丈夫」ってなんだよ?

どういう意味だよ?

ま、確かにオレは貧乏人だがな

 

「目が合うとおしまいですよね~」

 

おいおいおい!

何畳み掛けてんだよ、キミ!

そうしてる間にも、豆柴はオレの指をガジガジかじってくるし!

 

気持ちがブレまくりじゃねーか!

 

これ以上抱っこしてると危ない。

危険を感じた僕はそ~っとワンちゃんをスタッフさんに返した。

 

スタッフさんが甘えた声で言ってきた。

「早くお迎えに来てくだちゃいね~」

 

 *

 

運命を感じてる人の気持が理解できた一日だった。

 

 *

 

今日もあとで行ってみようと思う。

 

 

 

では、また。