ども、「なめしげ」こと岡田達也です。
『ポセイドンの牙』
初日の幕が開いた。
「達也さん、何、舞台上を散らかしてるんですか?」とか
「客席にまで迷惑をかけないでください」
などのご意見をいただいた。
……おかしい。
真面目に芝居をしているというのに怒られてばかりだ。
いや、
思い返してみれば、私が“真面目にやればやるほど怒られる”のは昔からな気がする。
そんな俳優いるだろうか?
そんな大人いるだろうか?
あぁ……
ここにいるよ
一体、私の何がいけないというのだろう?
* * *
昨日、昔話を書いた。
25年前、紀伊國屋ホールで私が成井さんに怒られた話だ。
そして今日は、私が、紀伊國屋ホールにて「なめしげ」と呼ばれることになったエピソードをご紹介しよう。
『グッドナイト将軍』というお芝居のときだった。
僕はまだデビューして2本目。
演劇界で言えば「ペーペーのペーペーのペーペー」、
もしくは「吹けば飛ぶような」
もしくは「落ちているゴミ」くらいの存在である。
当時の新人に人権などあってないようなものだ。
そんなのは当たり前のこと。
いやいや、誤解しないでほしい。
今とは時代が違う。
それに。
先日も、とある演出家さんの土下座させた問題がニュースになっていたが、それに対する高橋克実さんのコメントが秀逸だった。
「だってお芝居の現場でしょ?何だってありますし、起こりますよ。そういう世界ですから」
一般社会と同等に考えると、演劇界なんて成立しない。
とにかく私など「まだ人になっていないレベル」の当時の話だ。
僕は『榎本』と『頼重(よりしげ)』という二役を演じていた。
頼重は、津田匠子さん(OG)演じる「巴御前」のお付きの若い武士だ。
なので、基本的には二人一組での出番が多かった。
あるシーンが終わって引っ込んできた。
当時、紀伊國屋ホールの舞台裏にはグランドピアノがあった。
そのピアノの上に、差し入れのチョコレートが置いてあった。
こう、何というか、小分けされた、一口サイズの、高級そうなチョコレートが。
そんな高そうなチョコレート、なかなか食べる機会はない。
ちなみに僕が一番好きなチョコは『ロッテガーナミルクチョコ』だ。
今思えば。
そんな安上がりな男なのだから、食べなければ良かったのだ。
手を出さなければ良かったのだ。
ま、こんな機会でもなければ食べられないか……
僕はひとかけ口に入れた。
おっ!
なんてこったい!
こいつは今まで経験したこと無い味じゃないか!
うまいよ、これ!
僕は、純粋に、津田さんと、その美味しさを分け合いたかった。
ずっと二人で稽古してきて、本番を迎えているのだ。
絆は深まっていると思っていた。
「津田さん、これ美味しいですよ」
僕が言った言葉はこれだ。
これだけだ。
これが事実だ。
しかし。
「いや、いらない」
津田さんはきっぱりと断った。
それだけで済めば良かったのだが……
津田さんはことのほかお怒りだった。
終演後、楽屋でみんなに報告されてしまった。
「こいつ、本番中に、私に向かって「つださぁん、これ、ウマいっすよぉ!おひとついかがっすか~」って言ってきやがった。あいつはナメてる!」
それ以来、私は「なめしげ」と呼ばれるようになった。
今ならわかる。
例えば。
今、竹鼻優太が本番中に「たつやさぁん、これ、ウマいっすよぉ!おひとついかがっすか~」って言ってきたら泣かす。
いや、泣かすどころの騒ぎではない。
確実に息の根を止めてやる。
そう考えれば津田さんは実に優しい。
結論から言えば……
本人はペーペーのペーペーのつもりでやってたのだが、その自覚はまったく足りていなかったということだ。
「なめしげ」と呼ばれて当然だったのだ。
お恥ずかしい。
*
そう考えると……
やはり私は今も昔も怒られて当然の俳優らしい。
いつの日かみんなに褒められる日が来るのだろうか?
当日券出ます。
お待ちしています。
では、また。