ども、ジプシー岡田達也です。
『サブマリン』
ジプシーしている。
これ、実は演劇用語だ。
ご存知の通り、「ジプシー」には「放浪者」という意味がある。
ご存知の通り、「放浪」には「あてもなくさまよい歩く」という意味がある。
私は人生そのものが放浪中なので、
「そんな演劇用語の解説などしていないで、さっさと自分の進むべき道を探しなさい」
という声が聞こえてきそうだ。
うん。
それはわかっている。
どなたか私の行き先を定めてくれないだろうか?
……話を進めよう。
稽古場を持たない団体は、区民センターなどの公共施設を借りることが多い。
で、この公共施設というやつは、長期間借りっぱなしができない。
仕方がないので、借りられそうないろんな施設を当たってみる。
結果、今日は東へ、明日は西へ、というようなことになる。
*
先日、行った施設の入り口に、とても大きな幕が吊るされていた。
なるほど
そういうものなのか
僕は小津信者ではない。
が、これだけの大監督の言葉には、さすがに説得力がある。
何せ僕なんか
高校進学は強(つよし)おじちゃんの意見に従い
大学進学は高校の同級生・山崎くんの意見に従い
演劇への道は恩師・高木先生の意見に従った
つまり
僕の人生、いつ何時も、自分以外の誰かに従って生きてきた。
*
この写真を撮ろうと思ってスマホを構えたときだった。
僕は背後からの視線を感じた。
この施設の警備員のおじさんの目だった。
ひょっとして撮影禁止なのだろうか?
でも声をかけてこないから大丈夫なんだろう。
僕は一枚撮った。
そのとき。
「お兄さん、今の写真……」
「あ、ごめんなさい。撮影禁止ですかね?」
「いやいや、そうじゃなくて。ブレなかったかい?」
「は?」
「いや、後ろから見ていたんだが……」
「なんでしょう?」
「撮る瞬間、手ブレしたように見えたんだ」
「……」
「おそらく今の写真はブレているよ。確認してごらん」
「……はぁ」
僕はカメラには詳しくない。
が、これくらい(↑)撮れていれば十分だと思う。
ピントも合っている。
けっしてブレてはいない。
「ね?ブレてるでしょう?」
「……(いや、そうでもないですけど)」
「もう一枚撮りなさい」
「……(え?)」
「さぁ、もう一枚撮りなさい」
「はぁ……」
「ほら、遠慮しないで」
僕はカメラを構えて取り直した。
まただ。
また自分以外の誰かに従ってしまった。
*
ブレているのは写真ではなく、私の人生である。
小津監督
僕はまだまだ自分に従えてません。
芸術家になれる日は来るんでしょうか?
では、また。