ども、ミスター折角こと岡田達也です。
「折角(せっかく)だから……」
旅公演に出ると、この言葉を口にする機会がグッと増える。
そりゃね、確かにね、
普段は滅多に訪れることのない土地に行けば、そういう気持ちになるのはわかる。
だって、次に来られるのはいつになるかわからないのだし。
それはわかるけど……
*
人生二度目の旭川に乗り入れた。
『居酒屋評論家』
『立ち飲み処探検家』
『B級グルメ警備隊』
など、数々の異名を持つ私は、ネットの情報と自分の嗅覚を頼りに、一軒の焼肉屋に目星をつけた。
旭川の市街地から車で10分ちょいの街外れにある、地元民が愛する小さなお店。
電話をかけると「16時から18時までで、2名様でよろしければ予約は可能です」とのこと。
その丁寧な受け答えに「こりゃ間違いない。ここの店主は良い仕事をしているはずだ!」と確信を持ち、ご飯の約束をしていた芋洗坂係長と二人で乗り込むことにした。
1 せっかく旭川に来たのだからタクシーで食べに行ってもいいだろう
*
このお店に向かうタクシーの車内で、焼き肉屋の近所に『よし乃』という人気ラーメン店があることを知ってしまう。
「芋ちゃん、歩いて3分のところに『よし乃』があるな……」
「……たっちゃん、それは取り締まったほうが良いんじゃないか?」
「でも、これから焼き肉を食べるんだよ」
「じゃあ、余力を残すかどうかは、肉を食べながら考えよう」
ウマい
ウマすぎる
自分の嗅覚に酔った。
素晴らしい味とコスパと接客だ。
これこそ地元民に愛される名店だ。
「こ、これは……」
「た、頼んでしまうな」
「この後、ラーメン行くかもよ」
「そうだね。でも、せっかくだから……」
2 せっかくだから後悔のないように注文しておこう
*
片っ端からやっつけた。
かなりお腹はイッパイだ。
しかし……
「せっかく、ここまで来たんだからね」
「そうだよ。しかも車に乗ってまで来たんだよ。こんなついではなかなか無いし」
「……取り締まる?」
「……けしからんラーメンをやっつけよう」
3 せっかくだからと味噌と醤油をシェアして食べることにしよう
*
……
……
あほかーーーーー!!!!!
50歳を目前にした二人が何やってんだ!!!
なんだよ?
何が「せっかく」なんだよ?
焼き肉からのラーメンって!
俺たちは若造かよ!
胃袋だって歳を取るんだよ!
そもそも「せっかく」の使い方、合ってんのか?
「折角」[副]
1 いろいろの困難を排して事をするさま。無理をして。苦労して。わざわざ。「折角来てくれたんだから、ゆっくりしていきなさい」「折角のみやげを汽車の中に置き忘れた」
2 (「折角の」の形で、体言に続けて)滅多に得られない、恵まれた状況を大切に思う気持ちを表す。「折角の休日だから、どこにも出かけたくない」「折角の好機を逃がしてしまった」
3 全力を傾けて事をするさま。つとめて。せいぜい。手紙文などで用いる。「先生のお言葉を忘れずに、折角勉学に励む覚悟です」
(コトバンクより)
うん
まぁ
使い方は間違っていないか……
*
しかし、これだけは言える。
「せっかく」は自分を甘やかす魔法の言葉である。
みなさん
「せっかく」という言葉を口にする前に、もう一度自分に問うてみてください。
「おまえ、それで良いのか?」と。
4 「せっかく」を都合よく乱用している大人たち
では、また。