ども、「張りぼてのような人間だ」と言われたことがある岡田達也です。
『世襲戦隊カゾクマンⅡ』
昨日、稽古がすべて終了した。
最後の通し稽古をやって、荷造りし、劇場入りに備える。
そこで制作さんから
「ぼてが必要な方は言ってください。用意しますので」
との声がかかった。
『ぼて』
バリバリの演劇用語である。
*
僕が初めてこの言葉を知ったのは2002年。
『加藤健一事務所』に客演したときだった。
『煙が目にしみる』という演目で、日本各地を旅したのだが……
そのとき制作さんから
「岡田さん、ぼて、お使いになりますよね?」
と言われた。
人間、初めて耳にする言葉を聞くと、一瞬、脳が混乱する。
そのとき、ちょっとしたパニックになった。
「え? ぼて? ぼてって何?」
「張りぼてのことか? そりゃ、舞台セットは使わせていただきますけど……。いや、待て待て。今は張りぼてなんて言わないぞ。せめて大道具とか、パネルって言うでしょ」
「ひょっとして、腹ボテの略なのか? いやいや、腹ボテって妊婦さんてことだよな。芝居と何の関係もないぞ」
「え~? わからん! わかりゃん! 」
こういうとき、生粋の小心者が顔を出す。
尋ねれば良いのだ。
「ぼてって何ですか?」と。
なんだけど
「え?こいつぼても知らないの?何年芝居をやってるんだよ」
と思われるんじゃないかという恐怖で聞けないのだ。
人間、焦ると、思考回路が乱れる。
「そういえば『ぼてじゅう』のお好み焼き、久しく食べてないなぁ。お好み焼き、食べたいなぁ」
……いらない。
そういう寄り道をしている場合じゃない。
しかし、「ぼて」のついた言葉が他に思い浮かばないのだ。
一人で冷や汗をかいていると、制作さんが大きめの木の箱を持ってきてくださった。
あ……
そういうことか……
*
キャラメルボックスでもツアーに行くとき、全員に同じ大きさのダンボールが配布される。
これに、それぞれが荷物を詰め込み、トラックに載せるのだけど。
我が劇団ではこの箱を「私物箱」と呼んでいた。
(今でもそう)
「ぼて」と呼んでる人はいなかった。
それは、その劇団のルールなのだから仕方がない。
それに、僕はキャラメルボックスに入って初めて芝居を始めた男だ。
他所での経験がまったくなかった僕に「ぼて」の知識があるわけない。
*
「ぼて」
舞台衣装や小道具などの保管運搬に使われる竹で編んだ物入れ。現在の、木やプラスチック仕様のものもこう呼ぶ。
(舞台用語集より)
何でそう呼ぶのか、どれほどの歴史があるのかは全く知らない。
が、今の僕は普通に
「ぼて、使わせてください!」
と言えるくらいにはなった。
でも、それが大切なこと。
演劇の世界で生きていくなら演劇界の言葉は覚えておかないと。
* * *
『世襲戦隊カゾクマンⅡ』
今のところ、上演時間は2時間5分前後になりそうです。
お待ちしています。
では、また。