ども、カクスコが大好きだった岡田達也です。
人は誰かの言葉で救われることが多々ある。
……と思う。
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俳優生活20周年を迎える頃だった。
自分の役者のスタイルについてちょっと悩んでいた。
まぁ、役者なんて悩んで悩んで答えが出ないで、また悩んで……、の繰り返しだとは思うし、僕の悩みなんて他人から見ればとてもちっぽけなものだと思う。
なんだけど、本人にとってはとても重要だったりするもので。
そんなときに出演したのが『樹海』という鈴井貴之さんプロデュースのお芝居だった。
このお芝居には元カクスコの井之上隆志さんも出演していた。
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僕はキャラメルボックスに入団してすぐ、近江谷太朗先輩からカクスコの存在を教えてもらった。
「達也は絶対に好きなはず!」と太鼓判を押され、今は無きシアタートップスに観に行った。
男6人のバカバカしいやり取り
ダメな男たちの悲哀
笑って笑って少し泣けて
そして、あまりにも美しいアカペラ
見事にハマった。
大好きになった。
大ファンになった。
後半のカクスコは人気が出すぎてチケットが手に入らなくなり、僕は当日券を購入するためにトップスの階段に4時間並んだことがあるくらいだ。
今でも「一番好きな劇団は?」と聞かれれば、間違いなく「カクスコです」と答える。
そのメンバーの一人である井之上さんと共演できる日が来るなんて……
長いこと続けてるとたまには良いことがあるもんだなぁ、と思っていた。
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僕の悩みを聞いてくれた井之上さんは照れ臭そうにこう言った。
「舞台上で岡田くんが拾ってくれるから僕は初めて“面白い人”として存在できるんだよ。もしもいなかったら“変な人”で終わっちゃうんだ。この差は大きいよ。岡田くん相手なら安心してどんな球でも投げられる」
大好きな劇団の、大好きな俳優さんから、こんな言葉を貰えるなんて。
もちろん多少のリップサービスはあっただろう。
でも、この言葉で僕はとても励まされた。
僕みたいな俳優でもまだ舞台にいていいんだ。
舞台に立ってて良いんだ。
僕はあのときの井之上さんの言葉を片時も忘れないでいる。
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それから……
開演前の舞台上でずっとギターを弾きながらリクエストした曲を歌ってくれたこと、大切な宝物です。
『渡る世間は鬼ばかり』の撮影に遅刻した話も
「これを言うと周りからは気持ち悪がられることが多いんだけど、最も尊敬する人物は父親なんだ」という話も
どれもこれも忘れられません。
井之上さん、残念です。
残念で残念でたまりません。
もう一度、ご一緒したかったです。
今日はあなたの大好きだったサブウェイのサンドイッチを食べようと思います。
ご冥福をお祈りします。
では、また。