ども、モノマネは苦手な岡田達也です。

 

 

 

『鍵泥棒のメソッド』

稽古は折り返しを過ぎて佳境に入ってきた。

 

僕はオリジナル・キャストでは「コンドウ」という役を演じる。

コンドウを演じるのは二度目なので、手探り状態というわけではなく、やらなければならないことは理解しているつもりだ。

 

 *

 

初演のとき。

稽古の冒頭、成井さんから注文が入った。

「この作品は映画を舞台化するという珍しいパターンです。で、メインの3人については可能な限りあのキャラクターのままやってほしい。つまり堺雅人さん、広末涼子さん、香川照之さんの演技をできるだけお手本にしてコピーして演じてほしい」

これはとても珍しい注文だった。

(初演を観た方で「え?岡田達也、あれで香川さんを真似てたつもり?気が付かなかったよ」という苦情は飲み込んでください。そして墓場まで持っていってください)

 

「演技をコピーする」

それはお手本があるわけだから簡単なようにも思える。

しかし……

実際はとても難しい。

 

ちょっと専門的な話になるけれど、役者には人それぞれクセがある。

とくに「セリフの言い回し」に関してはみんな違う。

もちろん技術的な部分が大きいが、「自分が納得して消化できる言い回し」というのは絶対的に違うものだ。

 

で、僕は何度も映画を観返した。

香川さんのセリフに合わせてしゃべってみたりした。

やはり……

普段の自分ならば使わない言い方がたくさん出てくる。

最初は戸惑ったりもしたが、そのうちその作業が面白くなってきた。

 

なんというか“自分にはなかった引き出しが増えていく感じ”がしたのだ。

 

例えば

「その音色を発するためにはどういう気持ちになってれば良いのだろう?」

「そこで笑うってことは感情解釈が違うんだな」

「その表情になるにはもっと困らなくてはいけないんだな」

みたいなことの連続だった。

そして、それが、キャラメルボックスに入団して初めて取り組んだ方法論だったので、非常に新鮮だったことをよく覚えている。

 

 *

 

再演の稽古が始まってセリフをしゃべりだしたとき、初演の感覚が蘇ってきた。

身体に染み付いているものだ。

けれど、同時にちょっとした違和感も感じた。

 

あ……

自分……

楽な方向でしゃべってるかも……

 

つまり「あの時より自分に近付けてしまっているなぁ」と思ったのだ。

いわゆる一人歩きってやつだ。

それはそれで否定されることでもないのだけど、それは僕のやりたいことじゃない。

 

 *

 

先日、取材を受けたとき、畑中智行が同じことを言っていた。

「初演のとき、成井さんに演技をコピーしてって言われて、死ぬほど映画を観返しました。今、稽古してても、やっぱりそれがベースであることは間違いないです」

 

成井さんは今回「演技をコピーして」とは言ってない。

だけどどうやら畑中も僕も思いは同じらしい。

僕は今回だけですでに10回近く観返している。

頭の中で香川照之さんがちらついてしょうがない。

 

そのうち畑中は堺さんのような笑顔族になり

僕はヘルシア顔になるのだろうか?

(どんな顔だよ?)

 

そう言えば『ゴールデンスランバー』も、畑中は堺さんで、僕は香川さんの役だったな……。

ま、そもそも僕や畑中レベルの役者がコピーしようと思ってもまったく同じにはならないのだけど。

 

今日もコピペに挑戦してきます。

 

 

 

では、また。

 

 

 

追伸

たくさんの誕生日プレゼント、そしてチョコレートをありがとうございました!

僕の血肉にさせていただきます。