ども、毎晩スパークリングワインをがぶ飲みしている岡田達也です。

 

 

 

父親の隆夫さんは字がキレイだ。

 

隆夫さんはどちらかと言えばダメな人生を歩んでいる人で

(もちろん僕はその上を行ってるという自覚はあるので大丈夫だ。……何が大丈夫なんだ?)

人の悪口を一切言わない母親の秀子さんでさえ「どうしてお父さんは……」と、ちょいちょいため息をついていたほどだ。

 

その秀子さんが「お父さんは、生き方はともかく、字だけは美しい」と昔から絶賛していた。

僕も子供の頃から隆夫さんの字のキレイさは理解していた。

そして、大人になったら自分もあんな字が書けるようになるものだと思っていた。

 

 *

 

もうすぐクリスマスだ。

 

この間、左東広之が楽屋で言っていた。

「僕はサンタクロースを信じたこと、一度もないんです」と。

「僕だけじゃなく妹も信じてませんでした。つまり左東家の方針というか伝統というか……」

 

なるほど。

僕もサンタを信じようとしたことはあるが、それをくじかれた経験がある。

 

 *

 

小学1年生のときだった。

それまでは両親が別居していたため、数年ぶりに家族でクリスマスを過ごすことになった。

きっと二人の間で「クリスマスプレゼントを用意しよう」という話になったんだろう。

隆夫さんに「何か欲しいものはあるか?」と訊かれた。

それがとても不自然で、オマケに何度も何度も執拗に訊かれたので、子供心に「こりゃ何かあるな?」と疑った。

しかも。

「今年あたりはサンタクロースがくるかもな」とも言われた。

なんだ?

「今年あたりは」って?

サンタさんは気分で働いているのか?

 

いくら鈍い僕でも気が付く。

「お父さん、サンタになってクリスマスプレゼントをくれようとしているんだな」と。

 

この時点で隆夫さんはサンタ失格だ。

それでもプレゼントが貰える嬉しさでワクワクしながら眠りについた。

 

朝。

僕が欲しかった希望の品が置いてあった。

そしてその上にメモが置いてあった。

 

そこには

筆ペンで

カタカナのメリークリスマスの文字が

縦書きで

見事な達筆で書かれていた。

 

……

……

 

 *

 

2歳の息子がいる左東広之に尋ねた。

「サンタを信じなかったさとぅは息子にはどうするの?」

「う~ん、悩んでるんですよね」

「いつかはバレるんだから、サンタはいるってことにしておいたら?」

「そうですね(笑)」

 

 *

 

もうすぐクリスマス。

久しぶりにキャラメルボックスのお客さんと劇場で過ごします。

 

 

 

では、また。