ども、5,000円浮いた岡田達也です。
愛車のランボルギーニ・カウンタックに乗ってセリフを覚えるために喫茶店に出かけた。
誤解を招きそうなので付け足しておくが、カウンタックと言っても、あの、一世を風靡したスーパーカーではない。
僕が所有している黒い自転車だ。
……いいのだよ。
自分の愛車のことを何と呼ぼうがそれは僕の自由だ。
繁華街だったので自転車を止める場所がなかなか見つからない。
仕方なく、とあるディスカウントショップの前に止めた。
お店の前だし、ここなら問題ないだろう。
僕は喫茶店に向かった。
2時間後。
稽古場に向かうためにお店の前に戻った。
……ん?
……ない
ない、ない
ない、ない、ない、ない、ない、ない、ない、ない、ない
オレの、オレの、ランボルギーニ・カウンタックがなーーーいいいぃぃぃ!!!!!
えええぇぇぇっっっつつつ!!!!!
どこにいったのおおおぉぉぉ?????
盗まれたのか?
でもでも、鍵はかけておいたぞ!
とすれば、まさかの撤去?
持って行かれちまったのか?
お店の前だし、自転車が並んでるから大丈夫だと思っていたけど、ここは駐輪禁止だったのか?
あぁ
どうしよう
撤去なら取りに行かなきゃだし
盗まれたのなら返ってこないだろうし
途方にくれながら200mほど歩くと、前方に自転車回収中のトラックが止まっているのを見かけた。
ひょっとしたら……
僕はダッシュしてトラックまで走った。
荷台を見る。
あ!
あった!
あったぞ、オレのランボルギーニ・カウンタック!!!!!
ちょっと涙がこぼれた。
僕は運転席に回り込んだ。
運転手は故・たこ八郎さんを老けさせたようなおじいさんだった。
たこじい(仮名)は運転席でうまそうに煙草をくゆらせていた。
「あのー、すみません!僕の自転車が積んであるんですけど」
たこじいはニヤッと笑って言った。
「兄ちゃん、次の信号を曲がったところで待ってな。そこで下ろしてやるよ」
なんてこった
このおっさん、前歯が全部無いではないか……
どうやって食べ物を噛み切ってるんだ?
そんなどうでもいいことが頭をよぎりながらも「はいっ!」と返事して信号までダッシュした。
ちょいと送れて車が来た。
「兄ちゃん、どれだい?」
「言いにくいんですが、前から2台目のやつです」
「あ~あ、よりによって前かよ」
キレイに10台ほど並べられた自転車の前から2台目なのだ。
僕が運転手さんだったら「だったら自分で取れや、この不法駐輪野郎!」と怒鳴ってるだろう。
しかし。
たこじいは嫌な顔せず、僕が手伝おうとすると「危ないから下がってな」と言って自転車を取り出してくれた。
僕は申し訳なくて申し訳なくて、何度も「すみません、すみません、ありがとうございます」と繰り返して自転車を受け取った。
そして、その場を立ち去ろうとすると、たこじいが声をかけてきた。
「おい、兄ちゃん!」
「はい?」
「……5,000円、浮いたな(ニヤッ)」
そう言って親指を立てた。
そうだ。
撤去された自転車を回収するのには5,000円が必要なのだ。
「……ありがとうございます」
僕はもう一度頭を下げてその場を去った。
たこじい、お世話になりました。
もうあそこには止めません。
良かった、カウンタックを買い直さないで済んで。
では、また。