ども、いつまでたっても文字入力が速くならない岡田達也です。



昨日の続き。

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岡田 じゃ、今度は『風を継ぐ者』の話を。
加藤 (大声で)そうなんだよ!
岡田 なんですか、いきなり?
加藤 最初は『ケンジ先生』の曲だけをお願いするはずだったんだよ。でもね、でもね、ZABADAKの曲をいろいろ聴いてるうちに「これは!」って思ったんだよ。
岡田 どんなふうに?
加藤 『ケンジ先生』と『風を継ぐ者』って、同じキャラメルボックスの芝居なんだけど、対極にあるじゃないですか。それを両方やってもらうなんて、最初は想像もしてなかったんですよ、俺自身が。
吉良 それは加藤さんが、僕の曲の一面を先に聴き始めたからそう思ったのかもしれませね。
加藤 『十二月の午後~』とか『賢治の幻燈』を聴いてるときは、やっぱり『ケンジ先生』だったんですよ。でもね、その他の曲をたくさん聴かせてもらっているうちに「あれ?これは『風を継ぐ者』なんじゃないのか?」「あれ?これもそうだぞ」って感じでどんどん増えてきた。
吉良 僕も最初は『Poland』を殺陣のシーンに使うって聞いて「えっ?」って思ったんですよ。
加藤 そうですよね。あれはポーランド戦争を元にして作られた曲なんですよね?
吉良 ええ。ある日たまたまテレビでやっていたドキュメンタリー番組で、ポーランドの紛争の様子を取り上げていたんです。そこからイメージしてできた曲ですから。
加藤 だからZABADAKファンにとってはあんなシーンで使うなんて考えられないはずなの。
吉良 と、僕も思ってたんですけど、実際に観てみるとちゃんと合ってるんですよ。そういう切羽詰まった感じなんかが上手い具合にシンクロしていく。
岡田 なんかかっこいい(笑)

岡田 では、吉良さんが影響を受けたミュージシャンを教えてください。
吉良 たくさんいますよ。何でも聴きましたから。
岡田 その中でも特に?
吉良 一番はマイク・オールドフィールドですね。
加藤 ほーら見ろ!
岡田 ……何、勝ち誇ってるんですか。
吉良 それと、ケイト・ブッシュかな。
加藤 (大きく頷く)
吉良 それからジミー・ペイジ。
岡田 しぶいっすね。
吉良 まぁ、何でもありです。フュージョンも聴きましたし――
加藤 カシオペアとか?
吉良 そうですね。あの人たちはビックリするほど上手だったでしょ?
加藤 ほら、こうやってギターを弾くんですよね(とマネする)。これ、なんて言うんでしたっけ?
吉良 ライトハンド。
加藤 そうそう。それができなくて僕はギターをやめました(と涙目になる)。
吉良 で、やっぱりギターは上手くなきゃいけないと思ってジャズも聴きました。
岡田 その効果はありましたか?
吉良 実は僕、名古屋でギターが一番上手かったんです。
岡田 すごい発言(笑)。
吉良 もう、なんか道場破りみたいな感じで。こんなになって(肩で風切るポーズ)歩いてました(笑)。
大森 かっこいい!(笑)。
吉良 もうすっかり「俺はこれでやっていくんだ!」って思って、「まずは東京に行こう」と。それで親の目をごまかすために大学に行ったんです(笑)。
岡田 どこですか?
吉良 中央です。そこでも僕が一番上手かったから、ある音楽学校に入ったんです。そしたらそこにいたんですよ、僕より上手いやつが! ジャズギタリストの今堀ってやつなんだけど、これがもう上手いのなんのって! 当時の僕の100万倍は上手かった。「あぁ、俺はもうダメだ」って。これが僕の最初の挫折(笑)。
岡田 挫折の後は?
吉良 で、とにかく上手くなろうと思って練習したんですよ。ジャズとかフュージョンって上手くないとコピー出来ないから。
岡田 つまりテクニカルな部分を磨いていった?
吉良 そうですね。で、どんどん上手くなって近付いてはきたんです。「この曲はこんな感じでやれば。ほらね、そっくりでしょ?」みたいな。なんていうか「こさえてる」という感じ。そんなときにケイト・ブッシュの『ドリーミング』を聴いたんです。これで一気に楽になりました。
岡田 「楽になった」というのは?
吉良 それまではコピーばかりをやっていて、なんだか汲々としながらやっていたんですよね。それから解放されたというか。
岡田 「こさえなくてもよくなった」ということですか?
吉良 そういうこと、そういうこと! そういうものを飛び越えたところに行くことができたんですよ。
大森 ケイト・ブッシュマンが今の吉良さんを作ったわけですね?
岡田 え?ブッシュマン?
大森 え?そうでしょ?コーラの瓶を大切にしてる人だよね。
岡田 ……
大森 どうしたの?顔色悪いよ?

岡田 吉良さん、『風を継ぐ者』でのお気に入りの曲をまだ聞いてなかったんですが。
吉良 あれです。『Mistique Fly』
加藤 つぐみが沖田の手紙を読むところですね。
吉良 いえ、そうじゃなくて、岡田さつきさんが菅野さんを診察するシーンです。
加藤 へえー、あっちですか?
吉良 二人の恋心が揺れるじゃないですか?あそこでウルウルって(笑)。
加藤 『TEARS』はどうでしたか?
吉良 アレも良かったんですけどね、ウルウルとはしなかったな。
加藤 あのシーンにイマイチな役者が出てましたからね(と岡田を見る)
岡田 じゃあ、先ほど名前が挙がった菅野の話を――
加藤 てめえ、勝手に話題を変えてんじゃねーよ!
岡田 予定通りです。
加藤 きたねーぞ! 編集員の横暴だっ!!
岡田 (強引に)やはりキャラメルボックスと関わって一番の収穫は菅野と出会ったことですか?(笑)
大森 菅野は大喜びだよね。打ち上げの席なんかでは必ず吉良さんの近くにいるし。
加藤 吉良さんと知り合ってから、すっかり自信をつけちゃって。
吉良 そうなんですか?
加藤 それまでは虫の話をしても誰にも相手にされなかったんですよ。ところが、みんなが好きな吉良さんが同じ趣味を持ってるわけですから、もう大変です。「僕には吉良さんがいるから大丈夫だ」みたいな(笑)。
岡田 菅野の鏡前には虫の雑誌が飾ってありますよ。
吉良 ……『月刊 虫』ですか?
岡田 そうです! よくわかりましたね!(笑)
吉良 あれね、通販だけの限定販売だから高いんですよ!すごく薄いのに(笑)。

岡田 最後に。キャラメルボックスに何かありますか?
吉良 そうですね。んー……、あのー。やっぱりやめておきます(笑)。
大森 そんなー!
吉良 まだちょっと、これを言うのは早いかな?
岡田 言ってくださいよ!
吉良 あのですね……。これは成井さんへのお願いということになるのかな?キャラメルボックスの芝居にもっと「毒」が欲しいなって思うんですよ。
加藤 毒ですか。
吉良 そうです。僕、基本的に悪者とか好きなんですよ。
加藤 『風を継ぐ者』でいえば長州藩ですね?
吉良 ええ。でもね、キャラメルの舞台に出てくる人間は、やっぱり最終的に良い人じゃないですか。徹底的に悪い人間っていうのがいても良いかなって。
岡田 なるほど。実は、今日、どうしても吉良さんに話したかったことがありまして。
吉良 ?
岡田 二年くらい前に、あるお客さんから「私の好きなバンドのテープです。聴いてみてください」って送ってくださったテープの一曲目が『Poland』だったんです。まさかあの曲で自分が芝をやることになるとは思ってませんでした。
吉良 嬉しいですね。
加藤 なんでそのときに俺のところに持ってこなかったんだよーっ!! ばかものがーっ!!
大森 そのお客さんも嬉しかっただろうね。
加藤 おめえがもっと早くそのテープを持ってきていれば、もっと早く実現してたんだよっ!! たわけものがっ!!
大森 そうやってお互いが刺激しながら、お客さんにいいものが観せられたら最高ですよね。
岡田 また一緒にやっていただけますか?
吉良 喜んで。だってその気がなければデモテープなんて作ったりしませんよ(笑)。(実はこの時点で『不思議なクリスマスのつくりかた』のデモテープを作ってくださっていたのだ!)
大森 そうですよね。今日はお疲れのところをありがとうございました!
吉良 音楽雑誌のインタビューより断然楽しかったです。ありがとうございました。
岡田 (なぜか照れている)
加藤 君、ロッキンオンジャパンに再就職すれば?成井さんへは僕から言っておくから。ばいばーい!!!!
大森 みんな、仲良くしようよ!

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長い文章、お付き合い頂きありがとうございました。

吉良さん、無断掲載、ごめんなさいね!



では、また。