ども、誰でもいいから「あっぱれ!」と言われてみたい岡田達也です。



今、テレビで張本勲さんが「かーっつ!」と叫んでいる。

 * * *

昨日、クライマックスシーンを稽古した。

多少のネタバレになるし
このお芝居を観たことない方には何がなんやらわからない話で申し訳ないが
是非とも想像して読んでいただきたい。

ボコボコにやられた主人公・オカモトが
起死回生の逆転勝ちを収めるために
スーツのポケットから拳銃の弾丸を取り出して、空っぽの銃に装填(そうてん)するという場面がある。

ただし、この部分は舞台の隅でこっそり演じられる。
つまり、セリフをしゃべってる人だけを追いかけてると、なかなかこの部分には気付けない。
なんだけど僕個人としてはとても好きな場面だ。

 *

1995年の再演のとき。

オカモトを演じていたのはOBの今井義博くん。
僕は同僚の本郷を演じていた。

殴られ、蹴られ、汗だくになって舞台の隅に転がる今井くん。
そこに駆け寄る自分。

舞台中央ではクライマックスへ向け、
坂本竜馬と土方歳三の緊迫したやり取りが行なわれている。
BGMもガンガン盛り上がっている。

ここだ。
この隙にオカモトはスーツのポケットから弾丸を取り出し装填する。

もちろん
僕の役の本郷としては、その瞬間に「おぉ!弾丸が出てきた!」と驚くのだけど
本郷を演じている僕自身は、その段取りを知っている。

今井くんがハァハァ言いながらポケットに手を入れた。

弾丸が出てくる!
……はずだった。

出てきたのは丸められたティッシュだった。

……
……

今井くんはハァハァ言いながら再びポケットに手を入れた。

今度こそ弾丸が出てくる!
……はずだった。

出てきたのは再び丸められたティッシュだった。

……
……

今井くんはハァハァ言いながら再びポケットに手を入れた。
やっとこさ弾丸が出てきた。

ものすごい緊迫した場面で
使われて丸められたティッシュが
二度もポケットから出てくる

こんなことがあるだろうか?
あっていいのだろうか?

いや、
現実にあったのだ!

本番中に、舞台袖で、ティッシュを使うのはかまわない。
そんなことは誰だってある。
だが、使ったら捨てればいいんじゃないのか?
衣装のポケットに入れてどうする?

聞けば今井くんは何でもポケットに入れる癖があるらしく
例えば、切符を無くしたことなどは一度や二度じゃないらしい。

とにかく。
あの時の僕はポカンと口が開いた。
いや、あんぐり口が開いた。
「勘弁してよ!」と叫びたかった。

舞台上でこれ以上ないほど腰が砕けた。

 *

喜劇のような悲劇を繰り返してはいけない。

陳内くんも三津谷くんも、
どれだけ汗をかいても
舞台袖で汗を拭いて、使ったティッシュはそこで捨てて欲しい。

これは経験者からの大切な忠告だ。

昨日、そのシーンを稽古しながらそんなことを思い出した。

 * * *

張本さんは、あのときの今井くんに「かーっつ!」と言ってくれないだろうか?



では、また。