ども、西川先輩に「何でそんなに生き急いでいるの?」と言われた岡田達也です。



稽古に向かう前、ちょっと時間がなかった。

急がなくては。
急がなくてはならないが、昼飯は抜きたくない。
昼飯を抜くくらいなら稽古を抜きたい。
(役者やめたらどうだ?)
15秒ほど熟考した挙句、マクドナルドをかっ込むことにした。

幸いマクドナルドのクーポンがあったので
ビッグマックとドリンクのセットというジャンク万歳なメニューを注文しテーブルに腰掛けた。

箱の中に散らかったレタスをかき集め
2分ほどで食事を終えようとしたときだった。
隣に座っていたご婦人が声をかけてきた。

容姿は黒柳徹子さんの頭を小さくして、茶髪にして、
メガネをかけさせ
話すスピードをゆっくりにしたかんじで想像して欲しい。
(推定年齢80歳オーバー)

「あのー、お手洗いは近いわね」

ん?
今、僕に話しかけたのかな?
でも「お手洗いが近い」ってどういうことだ?

「あのー、お手洗いがね」

あぁ、間違いない
僕に向かっている

「お手洗いはあちらですよ」

「近いわね」

え?
何が?
お手洗いまでの物理的な距離?
それともあなたのお手洗いに行く間隔ですか?

「困ったわね」

あぁ、トイレが近くなると困りますね
僕もアルコールが入るとめっちゃトイレが近くなります

あ、いや
そんなことを考えてる場合じゃない。
行かなくては

「ご相談なんだけど」

何に困ってるのかはわかりませんが、
僕も稽古に行かなければならないので
お付き合いしている場合ではないのですけど

「本当は12時に約束してるの?」

何のですか?

「本当にどうしたものかしら」

あのー
さっぱり話がわかりませんが……

「なんでまだ来ないの!」

あぁ、待ち合わせですか
今11時45分だからまだ15分もあるじゃないですか

「そのうちいらっしゃると思いますよ」

「本当に困ったものだわ」

……僕の話、聞いてます?

「そこでね」

「なんでしょう?」

「私はテーブルに上着を置いてお手洗いに行くので、戻ってくるまで番をしてて欲しいのだけど」

……
……

そういうことですか
見張りですか
最初からそう言ってくだされば通じたのに……

いやっ!
そのー、いつもならお引き受けするのですが、今は急いでまして

「じゃあよろしくね」

「……あっ」

あぁ、行っちゃった
自分は何をやってるんだろう?

にしても
あなたがお手洗いに行ってる間に
このピンクと黒のパーカーを盗む人がいるとは思えないのですが……

たっぷり5分ほど待ったところでご婦人は戻ってきた。

「どうも、ありがとうね」

「どういたしまして」

「普通はね――」

まだ話が続くのか?
僕は急いでいるのだけど

「なんでしょう?」

「待ち合わせをしたら15分前には来るものでしょ?」


僕は自分よりせっかちな人を久しぶりに見た。

いくらなんでも早すぎますよ……
彼女も僕と同じように生き急いでるのかもしれない。

 * * *

稽古、順調です。

北海道のみなさん、
興味があればそれぞれの『えんかん』にお問い合わせくださいね。





では、また。