ども、ずいぶん長いことクリスマス公演に出演していない岡田達也です。



昨日のつづき。

 * * *

父親が買ってくれたケーキが「ひどくつまらない普通のケーキ」に見えた。

そう思ってしまった。
その直前に食べたアイスクリームケーキのせいで。

今なら言える。
「コラぁ~! どアホぅ! かんしゃせんか~いっ!」と。
「オマエの喜ぶ顔を見たくて買ってきてくれとるんじゃ~!」と。
 
というかもしもタイムマシンに乗れるなら
その場に飛んで渾身のパワーボムをくらわしてやりたい。

しかし……
親心がわからない僕はつまらなそうに食べた。

そして。
心の中で誓った。
「来年は、来年こそは、我が家もアイスクリームでできたケーキを買ってもらおう」

一年後。

クリスマスがやってきた。
僕は執念深く覚えていた。
「アイツだ。アイツを食す季節がやってきた!」と。
サンタさんにもトナカイにも用はない。
靴下だって吊るさなくていい。
あのケーキさえあれば。

父親に言った。
「今年はアイスクリームでできたケーキが食べたい!」と。

父親は不思議そうな顔をした。
「そんなものがあるのか?」

僕は答えた。
「ある!」

父と母はちょっと考えてから言った。
「う~ん……、全部アイスクリームだろ?食べきれないんじゃないか?お腹こわすぞ」

それでも僕は自分の意見を押し切った。

夜。
父親が買ってきてくれた。
見事な、ホールの、アイスケーキ。
僕は喜び勇んで飛びついた。

だが……
父親の言うとおりだった。
一人でそんなもの食べきれるわけもなく、あっという間にギブアップとなった。

母親が言った。
「どうするの?こんな大きなもの冷凍庫にも入らないし。どんどん溶けていくよ」

僕は何も言い返せなくて、ただただ黙ってそのケーキを見ていた。
いや、親と目が合わせられなかったのだ。

父と母はそのケーキを少しだけ食べ
残りを小さめに切り取り、冷凍庫に入るだけは取っておいてくれた。
そして
残りは捨てられた。

僕はとても恥ずかしかった。

 * 

あの日以来、アイスクリームケーキを食べていない。
クリスマスじゃなくても。
なんだか、こう、胸に苦味が広がって手が伸ばせない。
まぁ、食べる機会はめったに無いけど。

お父さん、お母さん
あのときは本当にごめんなさい。

 * * *

今年はセブンイレブンの小さなチーズケーキを買った。
もうこれで十分。



では、また。



追伸

キャラメルボックス『BREATH』
本日、大千穐楽です。
良いラストになりますように!