ども、懐かしむ岡田達也です。



昨日の続き。

『水平線の歩き方』とカップリングされていたのが
『ハックルベリーにさよならを』というお芝居。
実は、このお芝居の初演を観て、僕は演劇の世界に足を踏み入れた。
芝居に何の興味もなく、
しかし「役者になるために東京に行く!」と宣言した手前、なんとなく芝居を観るようになり
そこそこ面白い芝居はあったもののそこまでのめり込むことはなかった。

そんな中出会ったのがシアターモリエールで観た『ハックルベリーにさよならを』。
感動した。
客席で泣いた。
大学時代の友人(女の子)を誘って観に行っていたので、泣き顔を見られまいと必死に隠した。

この作品に会ってなければ僕は芝居をやっていない。

 * * * * *

池袋の大きめな稽古場で通しが始まった。
先行は『ハックルベリーにさよならを』。

これが、すごかった。
ものすごいスピードで爆走している。
オマケに登場人物全員のテンションが高かった。
“飛ばす”という言葉がピッタリの芝居だった。

「あー、ハーフタイムシアターってこうだよな……」
1時間の芝居だけに、
無駄な部分や説明台詞が少なく、起承転結にかかる時間も短い。
どれだけ爆走していてもラストシーンの静かなところで急ブレーキがかかるから必然的に緩急が付く。

 * * * * *

「飛ばしていこう。今までの稽古を捨てるわけではなくテンポを上げるんだ」

そう思ったことを覚えている。
例えば4ビートを8ビートに捉え直すような、
メトロノームのピッチを上げるような、
そんな、そんな感じ。

んでもって飛ばしたんだと思う。
周りの反応も気にせず、ひたすら舞台上のセリフに集中した。
そうしていないと自分のセリフさえ見失いそうだったから。

 * * * * *

そしてラストシーン。
僕は目の前に浮かんでいるであろう水平線を見るべく正面を見た。
ちょうどそこに制作部の長友さんという女性が座っていた。
その長友さんがハンカチで目頭を押さえた。

「あっ、何かはわからないけど、長友さんには何かが伝わったみたいだ。……もしかするとこのお芝居は大丈夫かも」

それは自信でも確信でもなく、ひょっとすると願望だったのかもしれない。
それでも、彼女の反応は僕の背中を押してくれた。

 * * * * *

新作が生まれるときは色んな要素が必要だ。

『水平線の歩き方』のとき、少なくとも僕にはこんな出来事があった。
きっと出演者の数だけ、スタッフさんの数だけ
このお芝居に関わった人の数だけエピソードがあるんだろう。


今は『君をおくる』を手さぐりしながら創っている。
あのときと同じように。
何が正解かもわからずに、あーでもないこーでもないの連続だ。

とりあえず初めてのランスルーで74分にならないようにしよう。



では、また。



追伸

キャラメルボックス役者ブログも更新しました。
http://caramelbox-actor.blog.so-net.ne.jp/2015-09-16