ども、飲み屋を流すのは得意な岡田達也です。



世界陸上が始まった。

鳥取で合宿をしていたウサイン・ボルト選手が100m予選に出場。
余裕を持って準決勝進出。
さすがだ。
鳥取で僕に出会わないで余計なアドバイスをもらわなかったのが勝因だろう。

ところで……。

パウエルもゲイもガトリンもボルトも
遡ればジョンソンも、カール・スイスも
実力者たちは予選の最後を「流す」。
勝利を確信した瞬間にスピードを緩める。
必ず流す。

あれが不思議だった。

みんな決勝だけ全力になる。

 * * * * *

お芝居は流すことができない。
90分経ったところで
「おっ! 今日は良い芝居だな。もう大丈夫だ。ラストの30分は流そう」
なんて考えるバカはいない。

もちろん2時間全力でやったからといって、必ず100%のパフォーマンスが発揮できる保証はどこにもない。
しかしその回その回をマックスでやっておかなければ、共演者にも、スタッフさんにも、
そして何よりお客さんに対して失礼だ。

 * * * * *

照れ屋さんがいる。
劇団OBの近江谷太朗先輩だ。

「今日の芝居は何%ぐらいの力でやりました?」

「うーん、20%くらいかな」

「低っ!」

「俺が本気を出すとお客さんが倒れちゃうから」

これが事実なら流すどころの騒ぎじゃない。
片手間の仕事と言っていい。

だけど僕らは知っている。
いや、僕たちだけじゃなくてお客さんも知っているはずだ。
この人がいつだって全力で戦うことを。

「今日も100%でやったぜぃ!」というのもカッチョいい。
だけど、100%で演じた上で「20%」と答えるのも、
「まだまだこんなものじゃない」という自分に対する負荷になる。
これまた覚悟があってカッチョいい。

 * * * * *

100m準決勝、ボルトは再び流すだろう。

『時をかける少女』大阪公演、近江谷太朗先輩も相変わらず20%しか出ないかもしれない。
しかし気持ちはいつだって決勝戦……、のはずだ。

残すところ二日です。



では、また。



追伸

僕はいつだって18%ですけどね。