ども、札幌の街がよりいっそう好きになった岡田達也です。
大学を卒業し、東京に出てきた。
とりあえずの働き口も見つけ、念願だった都会の生活が始まった。
それで十分僕の欲望は満たされていた。
だけど。
ちょっとだけ胸が痛む。
大学の恩師に「役者を目指して東京に行きます!」と宣言したこと。
そのくせ何もしないのは恩師を裏切ることになりはしないか?
最初からその心づもりだったくせに、いざとなると罪悪感が襲ってくる。
「じゃ、芝居の一本でも観てみるか。それでどうなるわけじゃないけど、何もしないよりは」
そんな言い訳で芝居を観ることにした。
当時の情報誌の横綱、ぴあを買ってパラパラめくった。
たくさん、たくさんの芝居が並んでいた。
どれを観れば良いのかさっぱりわからない。
でも、どれか
何かを無理やりにでも……。
今思い返してもどうしてその作品を選んだのか思い出せない。
僕の目に留まったのは、今は無き新宿シアタートップスで上演された作品だった。
『質屋の女房』
演出
木野花
出演
綾田俊樹
ベンガル
木野花
* * * * *
昨日の打ち上げで木野花さんに言われた。
「芝居なんて正解があるわけじゃないんだから、岡田くんだって、年下だからって遠慮しないでどんどん思ったこと言えばいいのよ。それが作品を面白くするために必要ならどんどん言いなさい。間違っててもいいから」
* * * * *
あの時『質屋の女房』が面白くなかったら、僕はもう芝居を観なかっただろう。
「あ、お芝居ってちょっと良いかも……」
そう思えたから、次は、今度は、っていろんな芝居を観てキャラメルボックスに出会った。
25年前、舞台と客席にいて、何の接点も持たなかった人間が、今こうして同じ芝居を創っている。
この人生の不思議さ。
僕は「何の取り柄も無い人間」ということにかけてはたいそうな自信があるけど、意外と太いツキを持ってるのかもしれないなぁ。
そんなことを思った札幌最後の夜。
花さん
あなたがいなければ僕は芝居をやってなかったでしょう。
ありがとうございます。
では、また。
追伸
札幌演劇鑑賞会のみなさん、お世話になりました。
みなさんの演劇熱の高さは本当に素晴らしいと思います。
どうかその熱を冷まさないでいてください。
芝居なんて必要とされなければ何の意味もないですから。