ども、今からでもユーラシア大陸を渡った方が真人間になれるんじゃないかと悩んでいる岡田達也です。



『蜜柑とユウウツ』の稽古の最中
キャラメルボックスOB・今井義博くんに本を薦められた。

『波の音が消えるまで』(新潮社)
沢木耕太郎・著

ノンフィクションライターの沢木さん初の長編小説らしい。
しかも1500枚の書き下ろしだという。
かなりのボリュームだ。
「旅公演のお供に良いと思いますよ」
そう言ってプレゼントしてくれた。

本当は東京公演が終わった後の旅で読もうかと思っていたのだけど
ついつい石川公演で読み切ってしまった。
たいへんに面白かったから。
マカオの地でバカラにはまってしまった男の物語。
『鳥取の坊や達』と呼ばれていた僕としては
ギャンブラーとしての血が騒いでしまったらしくページをめくる手が止まらなかった。

なるほど、確かに小説ではあるけれど
これは、あの『深夜特急1 香港・マカオ』(新潮文庫)で
沢木さん自身が体験したことがベースになってることは間違いないなぁ
ノンフィクションな部分が多いなぁ
だから面白いんだなぁ
なんて思いながら読んでいるとあっという間に読み終わってしまった。

 * * * * *

その影響で久しぶりに『深夜特急』が読みたくなった。
何年ぶりだろう?
10年か15年か。
背表紙もすっかり色あせてしまった文庫全六巻。
捨ても売りもしないで取っておいた。
いつか、必ず、読み返すだろうと思っていたから。
それが偶然このタイミングになった。

一昨日、一巻を読んだ。
そうだった、そうだった。
こんな展開だった。
忘れていたことが少しずつ甦る。

昨日から二巻を読み始めた。
こちらはさらに記憶が曖昧だ。
一巻は強烈だったからかなり覚えていたのだけど
それ以降はほとんど忘れてしまっている。

シンガポール編でこんなくだりがあった。
日本の特派員と知り合った沢木さんは
その家にあった詩人・金子光晴さんの詩集を手にして読み返す。
初めて読んだときは何の関心も抱かなかった詩が
今度は沁みる入るように伝わってきたという。
5年も日本を離れて放浪していた金子さんと
日本を離れフラフラと旅している自分とがダブったのかもしれない。

 * * * * *

読み手の状況で、あるいは年齢で、あるいは環境で
その人の精神状態で受け取るものはそこまで大きく変化するんだなぁ。

詩って面白いもんだな。

 * * * * *

それと。
今、僕は三役演じているのだけど、その中の一つが金子光晴さん。
小説を読んでいて金子さんの名前が出てきたときゾクッとするほど驚いた。
すごい偶然。

『蜜柑とユウウツ』の旅先で読んでと言われた本
読んでて読み返したくなった小説
その中に登場する人物を今自分が演じている。


あまりの偶然に驚いたという話。
どうでもいい話を長々書いてごめんなさい。
でもね、書きたくなるくらい驚いたのです。



では、また。