ども、もう一度後輩を締め直すことにした岡田達也です。



キャラメルボックスの稽古場はビルの地下1階にある。
事務所は同じビルの3階。

役者たちは、まず3階の製作部に挨拶してから地下の稽古場に下りる。
当然、ビルのエレベーターを使う。

想像して欲しい。
1階の入り口に透明な自動ドアがあり
そこを入って五歩くらい進むと一台のエレベーターがある。

 * * * * *

昨日、ビルに着いた。
1階の自動ドアの前に立った。
するとドア越しに奧のエレベーターの扉が開いたのが見えた。

あぁ、あれに乗りたいな……

フト見るとエレベーターの前で一人の男が立っていた。
畑中智行だった。
ヤツは開いたエレベーターに乗り込んだ。
そして3階のボタンを押そうとした。
すると必然的に体が180度反転しこちら向きになる。
ヤツは自動ドア越しに立っている僕を認識し笑顔を浮かべた。

いや。
今思えばあれは笑顔ではなく、数日前に見た上川隆也先輩と同じ「ニヤッ」という冷笑だったか。
とにかく畑中は僕の存在に気付いてくれた。

あぁ、助かった……
ヤツは(開)のボタンを押して待っててくれるだろう。
僕は自動ドアを通り、エレベータに向かいながら挨拶した。

「おはよう」
「あ!大将(彼は僕をそう呼ぶ)、おはようございます!」

そして。
エレベーターに一歩足を踏み入れた瞬間……

ドアが閉まり始め、キッチリと僕の体は挟まれた。

「あ!すみません!(開)を押してるつもりが(閉)を押していました!(笑)」
「……」
「すみません!おかしいなー!おかしいなー!なんで読み違えたんだろ?(笑)」
「……わざとだろーが」

先輩をエレベーターの扉に挟み込む。
なんという愚行。
なんという幼さ。
オマエは小学生か?

しかし。
3階に着くまでの間、二人で笑い続けることができたので良しとしてやるか。
なかなか気の効いたボケだった。

 * * * * *

3階に到着して扉が開いた。
昨日の日記の登場人物、鍛治本大樹が立っていた。
ヤツは僕の顔を見て言った。

「あ、おつとめご苦労様です」


……もっとビシビシ取り締まっていこうと思う。



では、また。