ども、目覚まし時計は母親だけではなかった岡田達也です。



昨日、目覚まし時計のことを書いた。
ついでに思い出したお話。


大学生の時。

初めての一人暮らしに選んだのは『太子荘』というアパートだった。
学校から徒歩で15分ほどの所にある古くてボロボロな建物。
家賃14000円、当然の共同風呂、共同トイレ。
僕の部屋は5号棟の真ん中にある503号室。
6畳一間で、なぜか部屋の壁が深緑色に塗りたくられていた。
もちろんその壁はとてつもなく薄く、隣の住民が何をしているかは筒抜け状態だった。
壁に耳を当てれば隣の人が『夜のヒットスタジオ』を見ていることさえわかる。
耳を当てなくとも咳払いなどはガンガン飛び込んでくる。
「あー、隣のヤツ風邪ひいたな」くらいのことはわかる生活だった。

* * * * *

貧乏大学生だ。
お金はない。
時間はある。
必然的に得意技は「睡眠」となる。
いくらでも眠れた。
(小学生の時と大差ないな……)

しかし、授業に遅れると単位を落としてしまう。
遅刻するわけにはいかない。
この寝坊助を助けてくれるのは目覚まし時計だ。
僕は鳥取から持参したピンク色のツインベルの目覚ましを愛用していた。

ツインベル。
最強の目覚ましだ。
二つのベルの間で小さな小槌みたいなヤツが左右に揺れて
「ジリリリリリリリ!!!!!!」
と、とんでもない破壊力で鳴るやつ。

当時の僕は電子音の目覚ましではビクともしなかった。
だからツインベル。
しかし……。
実はツインベルでもやっと起きられるかどうかのダメ人間だった。

* * * * *

何をしていたのか覚えてない。
どうせ朝まで『フレンドリー』というファミレスで、280円のおかわりし放題のコーヒーを飲みながら朝まで友人としゃべっていたのだろう。
明け方部屋に戻り、もうろうした意識で目覚ましをセットした。
午前中に絶対に出席しなければならない授業があったから。

そして僕は寝た。

* * * * *

「おい、たつ!たつ!」

となりの部屋に住む高校時代からの同級生である山崎くん(通称・やんさ)が僕の肩を揺すった。

「おい、たつ、起きろ!」

僕は何とか体を起こした。
眠い目をこすりながら訊ねる。

「……あれ?なんでやんさがここにおるだ?」

「あのなー、オマエの目覚ましがずーっと鳴っとったけど、いつまで経っても止まらんかったけぇ、止めに来ただ!」


す、すげー。
隣の住民が起こしに来てくれた。
これで何とか遅刻せずにすむ。

ありがとう、やんさ。

* * * * * 

今でも思い出す。
学生時代、一度も部屋のカギをかけていなかった。
それで助かったんだなー、と。


みなさんは戸締まりされよ。



では、また。