ども、最後はお尻の穴を締めようと思う岡田達也です。



昨日はアフタートークに出演してくださった渡辺多恵子先生らと飲みに行った。
先生の仕事関係、先生の同級生など、直接は知らない方も多かった。
僕の両隣には女性の方が座っていたのだが、名前はもちろん、どういう関係の方なのかもさっぱりわからない。
しかし「今日は面白かったです!」と持ち上げられてすっかり良い気分になり、調子よく飲んでいた。
名前もわからずに飲めるのが大人の証拠と言って良いだろう。

と、右隣に座っている女性に言われた。
「キャラメルボックスさんの舞台って早いテンポで早くしゃべりますよね?」

いつもならば
「そうなんですよ。演出家がじつにせっかちな人でして」とか
「そうなんですよ。演出家が若い頃F1レーサーに憧れていまして」など
茶化して言う可能性が高い場面なのだが、いかんせん初対面の女性である。
適当なことを言うわけにもいかず、ちょっと真面目な話をした。

“キャラメルボックスの脚本は言葉が固めで、しかも多めである”
“その言葉の量を、一定のスピードとテンションをキープしながらしゃべらければいけない”
“それは、成井さんが『つかこうへい事務所』や『黒テント』や『夢の遊眠社』の影響を強く受けてるからだと思われる”
というようなことをかいつまんで話した。
そしてそれを体現するためには、ある程度の肺活量と、それを使いこなせる体が必要だ、と。

そこで食い付いてきたのが、向かいに座っていた声優の日高のり子さんだ。
「そうそう!テンポやリズムを作るのは息の使い方なんだよ!」

この人は声優だけでなく舞台もミュージカルもやっている。
僕の言いたいことがわかるのだ。
嬉しくなった僕は、最近自分が課題にしていることを話した。
「ワンブレス(一息)でもっともっと長くしゃべりたいんです」

「わかる!無駄なブレスは削っていきたいよね!」

「ですよね!でもね、やっぱり緊張すると体が固まって息が浅くなっていくんですよね」

「そうそう!だから若い子なんか何度もブレスしちゃうんだよね」

「肺活量は変えられないけど、フル活用できるようにしたいなと思ってるんです」

「そのためにはね、横隔膜を目一杯下げ……」

わぉ!
僕は思わず膝を叩き、日高さんの話を途中で奪った。

「ですよね!そうですよね!僕もそう思うんです!だから、普段のトレーニングでなるだけ横隔膜を下げる練習をしてるんです!緊張しても深く息が吸える体になり……」

今度は僕が言葉を取られた。

「そのためには脇腹から後ろにかけてを意識してそこから声を出さないと!」

「わかります!」

「で、最後の一息が足りなくなったらお尻の穴を締める!」

「(笑)」

彼女は僕よりも年上で経験も豊富だ。
それでも未だに息が浅くなるし、それを防ぐ方法を考えているという。
それがなんだかとても嬉しかった。

気が付けば、両隣の女性を置いてけぼりにしてしまっている。
一般の方には「横隔膜を下げる」とか「お尻の穴を絞める」とか、そんな話どうでもいい。
そもそも「キャラメルボックスの芝居は早いですよね?」という話はどこに行った?

僕は謝った。
「あ、すみません。どうでもいい話ばかりになって」

と。
「いえいえ、大変面白い話でした。私も最後はお尻の穴を締めます(笑)」

大人の飲み会は名前がわからなくても成立するものだ。



では、また。