ども、疑っている岡田達也です。



僕の中で加治将樹が流行っている。

「流行っている」とはどういうことだ?と問わないでほしい。
そうとしか言いようがない。
ヤツは僕の中で流行っている。

加治くんは『ずっと二人で歩いてきた』に出演してくれたとき
「存在感のある俳優さんだな……」と思った。
が、僕は出演していなかったため彼の芝居を観たのは本番の1回きりだった。
しかし。
今は毎日、ガッツリと彼の芝居を観ている。
とても面白い。
とても魅力的だ。


今回、彼の演じる『小金井兵庫』という役は“語り手”のパートを担う。
(文字通り、お客さんに向かって必要な説明を語る人。わりかし長いセリフが多かったりする)

実は『風を継ぐ者』の再演のとき、僕も小金井兵庫を演じた。
そのときの苦労は忘れられない。
まずはセリフを覚えるのに一苦労。
恐ろしく長い説明セリフを叩き込むので、言ってみれば歴史の年表を丸暗記するのと同じ作業が繰り返される。
そして。
覚えた次に待っているのは“弁士”としての作業。
「もっと講談みたいにしゃべってくれ!」と成井さんに何度言われただろう。
歯切れ良く、江戸っ子の気っぷの良さを感じさせてほしい。
そのリクエストがなかなか消化できないで苦労した。
さらに。
「お客さん全員に語りかけてくれ!」というダメ出し。
これが、想像以上にパワーを必要とした。
全身を使い、手足を使い、声のボリュームを上げてしゃべった。
あの苦労は忘れられない。


僕の前には西川浩幸先輩が演じ
僕の次には大内厚雄が演じ
そして今回の加治くんが4人目の小金井兵庫。

「ひょっとして誰かに似るかな?」
そんなことも考えたのだけどとんでもない!
加治将樹はぶっとい加治印を押しながら突き進んでいる。
まるでブルドーザーが、全てを根こそぎ剥ぎながら前進しているような語りだ。
僕にはあんな発想無かった。

そして。
語りだけではなく、普通の芝居の部分。
そこでの愛嬌の量がまたハンパナイ。
見た目はポッチャリしたトド……
いやいや、ポッテリしたおじさん……
いやいや、丸めの青年である。
その安定感のあるフォルムは、もはや性別を飛び越え母性すら感じさせる。

愛嬌、母性、ユーモア。
十二分な武器を彼は持っている。

今回の小金井兵庫に期待していただきたい。

* * * * *

一昨日の稽古終了後、加治くんから発表があった。
「明日、稽古場に手作りのカレーを差し入れますので、みなさんはご飯だけを用意していらしてください!」

ええっ?
なんてステキなサービスなんだ!
稽古場に手作りのカレーを持ってきてくれるなんて!

そんな気遣いもできるのだ。
そりゃ、愛されるに決まってる。

* * * * *

ただ一つ……
あまり大きな声では言えないが、ヤツは年齢を詐称しているのではないか?と思っている。
公称は26歳だそうだ。
……おかしい。
絶対におかしい。
あんな「人生の酸いも甘いも嗅ぎ分けたような26歳」がいるわけ無い。

だから僕は毎日稽古場で訊いている。
「加治くん、本当はいくつなの?」と。



では、また。